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ブックマーク / honz.jp (249)

  • 一級の事故事例集『大惨事と情報隠蔽』 - HONZ

    情報隠蔽。誰もが、「情報隠蔽=悪」であり、起きてはならないと認識している。情報隠蔽が悪いのは、なにも不正につながるからだけでない。必要な情報が共有されずに恐るべき大参事を招いてしまうからである。 書は多くの歴史的大惨事を引き起こした主な原因が情報隠蔽でだったという新しい視点を提示する一冊だ。原発事故、大規模リコール問題、金融危機に至るまで情報隠蔽が問題を深刻化させたと分析しており、とても興味深い主張である。特に金融危機の原因の一つが情報隠蔽というのは、これまであまりなされてこなかった指摘だろう。 ありがたいことに、著者はこの情報隠蔽の原因となる要因と教訓を書第三章で網羅的に列挙してくれている。情報隠蔽による事件・事故を未然に防ぐためのチェックリストとしての価値が非常に高い。経営者など、日ごろマネージメントに携わる人にとって、書第三章を定期的に見直すだけでも書を手元に置いていておく意

    一級の事故事例集『大惨事と情報隠蔽』 - HONZ
    ikeit
    ikeit 2017/09/15
  • 『大学病院の奈落』「新聞協会賞」受賞記者がスクープの裏側を詳細に描く - HONZ

    2015年9月、読売新聞東京社は同年度の新聞協会賞を受賞した。受賞理由は「群馬大学病院での腹腔鏡手術をめぐる一連の特報」である。その特報取材班のリーダーだったのが書の著者である高梨ゆき子記者だ。 その特報とは、10年から14年にかけて群馬大学病院第二外科で行われた腹腔鏡手術後に、8人もの患者が相次いで亡くなっていた事実をスクープしたものだった。 執刀したのは当時40代の外科医。この医師はほぼ同時期に行った開腹手術でも10人もの患者の命を救うことができなかった。死亡率は11.9%。なんと全国平均の3倍に及んだ。 事件なのか事故なのか。医師個人の力量不足や過失として片付ける出来事なのか。そもそも大学病院運営や日の外科手術そのものに問題はなかったのか。14年11月14日付のスクープ記事を発端として、日の医療に対する不安が広がった。 読売新聞による一連のスクープと、壮絶な報道合戦のはてに、

    『大学病院の奈落』「新聞協会賞」受賞記者がスクープの裏側を詳細に描く - HONZ
    ikeit
    ikeit 2017/09/15
  • 社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ

    『チャヴ』、聞き慣れない言葉である。もとはロマ族の「子供」を指す言葉「チャヴィ」から来た、英国において用いられる「粗野な下流階級」を指す蔑称である。いくつかの英語辞典を調べてみると、「生意気で粗野な態度によって類型化される若年下流階級(オクスフォード英語辞典)」、「教養の欠如や下流階級であることを、その衣服や話し方、行動があらわすような人を示す蔑称。通常は若者を指す。(ケンブリッジ英語辞典)」、「たとえ高価であっても、その趣味が低俗であるとされる若い労働者階級(コービルド英語辞典)」などとある。 さんざんな物言いである。しかし、これらの定義を全部あわせても、チャヴという言葉を正しく理解するには足りないようだ。そこには「公営住宅に住んで暴力的」、「中流階級の謙虚さや上品さがなく、悪趣味で品のないことにばかり金を使う浪費家」、さらには、「暴力、怠惰、十代での妊娠、人種差別、アルコール依存」とい

    社会分断による英国の『チャヴ 弱者を敵視する社会』は日本の近未来かもしれない - HONZ
    ikeit
    ikeit 2017/09/14
  • 『予期せぬ瞬間 医療の不完全さは乗り越えられるか』 医者と医療にまつわる不完全と不可解と不確実 - HONZ

    医者はどうしてミスから逃れられないのか。医療には未知や不確実なことがどれほどあって、医者や患者はそれらにどう対処したらよいのか。書は、そんな問題をテーマとした、アトゥール・ガワンデのデビュー作である。 ガワンデは、現役の外科医であると同時に、雑誌『ニューヨーカー』にも寄稿する文筆家である。その最新作『死すべき定め――死にゆく人に何ができるか』が大ヒットしたことは、まだ記憶に新しいだろう。2014年に発売された同書は、当初から一般読者の圧倒的な支持を得て、アメリカではすでに90万部のセールスを記録しているという。 『死すべき定め』は、「死をどう迎え入れるか」というテーマに対して、円熟した文章で迫ったものである。他方、研修医時代に書かれた書は、先のテーマを若く瑞々しい筆致で掘り起こしている。そのようにふたつのには、その年齢でしか書けない魅力(そしてガワンデにしか書けない魅力)がそれぞれに

    『予期せぬ瞬間 医療の不完全さは乗り越えられるか』 医者と医療にまつわる不完全と不可解と不確実 - HONZ
    ikeit
    ikeit 2017/09/12
  • 『デザイナー・ベビー ゲノム編集によって迫られる選択』 デザイナー・ベビーの誕生は避けられない? - HONZ

    ヒトが生殖以外の方法で新たなヒトの命を生み出す、改変するというアイディアは、数千年にわたって人類の想像を掻き立て続けてきた。科学者による理想の人間の創造を目指した『フランケンシュタイン』や遺伝子操作による優生学的な階級社会を舞台とした映画『ガタカ』など、このテーマを扱った作品は数え切れない。これらのフィクションが描き出すディストピアとクローン羊ドリーを誕生させたような分子生物学の急速な進歩は、世間にデザイナー・ベビーの誕生を危惧させるには十分だった。しかしながら、ヒトに対する遺伝子組換えに伴う技術的困難さから、10年ほど前まで多くの科学者はデザイナー・ベビーの実現は「誇大妄想以外の何ものでもないと」考えていた。 ところが、テクノロジーの進歩はときに、科学者の想像力を上回る。CRISPR-Cas9と呼ばれる革新的技術が、生命科学分野の在り様を一変させたのだ。膨大なゲノム中から小さな遺伝子配列

    『デザイナー・ベビー ゲノム編集によって迫られる選択』 デザイナー・ベビーの誕生は避けられない? - HONZ
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    ikeit 2017/09/12
  • 今週のいただきもの:2017年9月3日週 - HONZ

    去る9/7 、成毛眞の私的なパーティーがありました。その名も「表参道パルプンテ」。年齢性別経歴商売関係なしの50人が集まって、ただただ楽しくお酒を飲んで、おしゃべりするだけです。 さて、そんなパーティーの準備で、かすみ草を買いました。かすみ草の花言葉は「清らかな心」「幸福」「夢見心地」。石灰質の土壌を好み、学名はGypsophila elegans(gypsos=石膏、philios=愛する)と言います。和名は、白い花をたくさん付ける様が、春の霞のようであることに由来します。また、色付きのかすみ草を最近見かけますが、新しい品種というわけではないんです。万年筆のインクを1日ほど吸わせるだけで簡単に色付けができます。 それでは今週献いただいた新刊のご紹介です。版元のみなさま、毎度ありがとうございます!

    今週のいただきもの:2017年9月3日週 - HONZ
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    ikeit 2017/09/09
  • 優しいペン 『わけあり記者』 - HONZ

    弱者の気持ちを知っている人が、公器としてのペンを持っている社会は安心だ。書の著者は、中日新聞の記者である。過労からうつ病になり、復職後に両親の介護をかかえ、パーキンソン病の進行を薬でおさえながら勤務を続ける「わけあり記者」だ。書では、「ここまで書いてしまって良いのか」と思うほど克明に、事の次第を綴っている。心を動かされない人は、まずいないだろう。 熟達した記者の文章なので、一気に読める。しかし、執筆には相当の時間がかかったものと思われる。なにせ著者はパーキンソン病で、現在は右手の指一で原稿を打っているのだから。一冊のをまとめるには、相当に強い意志の力が必要だったはずだ。果たしてそれは、どんな思いだったのだろう。書のエピローグには、「世のわけあり人材よ胸を張れ」とある。 「わけあり人材」とは、人生の経験値が高い人のことではあるまいか。職場においても組織においても、最も大切な「気付き

    優しいペン 『わけあり記者』 - HONZ
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    ikeit 2017/09/09
  • 今週のニュースはこれを読め!9/2〜9/8 - HONZ

    『「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校 ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯』憎悪と暴力の渦の中で人間愛を失わなかった男

    今週のニュースはこれを読め!9/2〜9/8 - HONZ
    ikeit
    ikeit 2017/09/09
  • 『ブラック・フラッグス 「イスラム国」台頭の軌跡』ザルカウィと群像 - HONZ

    アフマド・ファディル・アル=ハライレー。それが書の主人公の名前である。だが名よりもこちらの名前のほうで世間には知られている。その名はアブー・ムサブ・アッ=ザルカウィ。イラクのアル=カーイダ(AQI)の創設者である。イラク戦争のさなか、米軍の占領政策の弱点を巧みにつき、イラク全土で武装反乱の炎を燃え広がらせたテロリストである。 家のアル=カーイダとは違い、現実的目標としてカリフ制国家の実現を目指し、欧米列強がアラブに引いた国境線を越える帝国の実現を掲げたこの男の思考は、同組織の3代目のリーダーであるアルー・バクル・アル=バクダディによりイスラム国という形で現在に受け継がれている 書はこの悪名高きザルカウィを軸にひとつのテロ組織がいかにして軍隊を持ち、国家としての体裁を持つまでにいたったかをジャーナリスト、ジョビー・ウォリックが丹念に取材したルポタージュである。 ちなみに作は2016

    『ブラック・フラッグス 「イスラム国」台頭の軌跡』ザルカウィと群像 - HONZ
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    ikeit 2017/09/08
  • ドキュメンタリ映画『おクジラさま~ふたつの正義の物語』を更に詳しく - HONZ

    2017年8月28日、反捕鯨団体のシー・シェパードは今年の捕鯨シーズンは日の南極調査捕鯨船の妨害を行わないと発表した。日の監視技術に太刀打ちできないのが中止の理由だという。まるで書の発売と映画の封切りを見計らったような時期の発表だ。だがこの問題は解決したわけではない。 書は9月9日から全国で順次公開されるドキュメンタリ映画『おクジラさま~ふたつの正義の物語』の完全書籍化である。 きっかけは2009年8月、『ザ・コーヴ(原題:The Cove)』というドキュメンタリー映画がニューヨークのソーホー地区の映画館で公開されたことだ。和歌山県太地町のイルカ漁を追った作品で、アメリカのインディペンデント映画の賞としては最大のサンダンス映画祭のドキュメンタリー部門で読者賞を受賞。2009年夏に全米で劇場公開が始まると大反響を呼び、その年のアカデミー賞を受賞した。 日の紀伊半島近くに位置する小さ

    ドキュメンタリ映画『おクジラさま~ふたつの正義の物語』を更に詳しく - HONZ
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    ikeit 2017/09/06
  • 『大学病院の奈落』変われない病院の体質が、惨劇を生み出した - HONZ

    森友学園と加計学園をめぐる問題に揺れた今年の通常国会で、ある重要法案が可決・成立したことはあまり知られていない。特定機能病院の安全管理を強化する改正医療法である。大学病院のような高度医療を担う病院は、医療安全対策も高水準でなければならないという方針が、法律として明文化されたのだ。 改正のきっかけとなったのは、読売新聞のスクープ記事だった。 <腹腔鏡手術後8人死亡 高難度の肝切除 同一医師が執刀 群馬大病院> 2014年11月14日最終版一面の見出しは衝撃的だった。 北関東屈指の医療拠点として知られる群馬大学病院で、2011年から2014年に腹腔鏡を使った高難度の肝臓手術を受けた患者100人のうち、少なくとも8人が死亡していることが判明したというのだ。記事は、8人を執刀したのはいずれも第二外科の同じ医師で、これらの手術は事前に病院の倫理審査を受ける必要があったにもかかわらず、申請されていなか

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    ikeit 2017/09/06
  • とてつもなく変態で、ありえないほど文章がうまい──『動物になって生きてみた』 - HONZ

    どうやったら、我々人間は動物の感覚にもっと近づくことができるのだろう。たとえばアナクマのように巣穴で眠り、森を徘徊して獲物を物色する。たとえばカワウソのように水辺に住んで魚やザリガニをべて生き、ツバメのように空を飛び、糞を撒き散らす。そうやって動物たちと同じように生きたら、彼らがみている世界を追体験できるのではないだろうか? そんな、言っていることはわからないでもないが自分でやろうとは思わないことをまともにやってしまった狂人が、書の著者であり、2016年のイグノーベル賞の生物学賞を受賞したチャールズ・フォスターである。狂人とは言い過ぎで、著者に対する敬意を欠いているのではないか? と思うかもしれないが、この記事を読み進めてもらえればその事実が把握いただけると思う。 人間とキツネなど他の動物たちとの間には境界があると著者はいう。それは当然だ。我々はキツネと子どもを作ることはできないし、カ

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    ikeit 2017/09/05
  • 明治神宮と『変形菌』 - HONZ

    変形菌、それは粘菌のことだ。粘菌、それは南方熊楠が愛し、昭和天皇が新種をいくつも発見され、2度もイグ・ノーベル賞に貢献した生物だ。「梅雨時のじめっとした林、あるいは真夏の暑い公園で、粘り気があって色あざやかなアメーバ状のものが倒木や切り株に広がっている」、そのアメーバ状のものこそ、そいつだ。植物でも動物でもキノコでもない単細胞生物。なのに、色も形も、多様で興味が尽きないのだ。 さっそく、この写真から始めよう。 この写真に出会って驚いた。 ちなみに、胞子とは、無性生殖のために植物が持つ生殖細胞のことだ。人間の目には見えていないだけで、ここまで躍動するものなのだ。 写真は『生命の森 明治神宮』(伊藤弥寿彦著、佐藤岳彦写真)というで見たもの。 明治神宮が創建から100年経ち、大きな自然調査を行なった際の一枚だ。そもそも明治神宮は、明治天皇が崩御された際に追慕する人の請願運動によって政府が神宮建

    明治神宮と『変形菌』 - HONZ
    ikeit
    ikeit 2017/09/03
  • 今週のいただきもの:2017年8月27日週 - HONZ

    木の国立新美術館で開催中のジャコメッティ展に行ってきました。ジャコメッティは20世紀を代表する彫刻家で、針金のように極端に細長く、引き伸ばされた人物彫刻で知られています。今回の展覧会は初期〜晩年の作品が集められ、彼の一生を追うことができます。個人的に気に入ったのは、大戦中に製作された作品です。持ち運びができるように、指の腹にも乗るようなサイズですが、彼の作品であることが一目でわかります。 細長い彫刻を作っておきながら、理想の女性はマリリン・モンローなんだとか。彼曰く、マリリン・モンローのように豊満なモデルを目の前にしても、作品を作ろうとすると、細く長くなってしまうそうです。生きた人間から感じる美しさや恐ろしさを表現しようと試み、髪や肉などがそぎ落とされた彫刻が生まれました。サルトルは彼の作品を、現代における人間の実存を表現したものと評価しています。会期は9/4までですが、ぜひ行ってみて

    今週のいただきもの:2017年8月27日週 - HONZ
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    ikeit 2017/09/02
  • みんな大好き大興奮!(のはず)『マンボウのひみつ』 - HONZ

    生きものによって人に好かれるのとそうでないのがある。それは、その生きもの固有の性質による場合もあれば、社会的なファクターによるものもある。たとえばアイアイを考えてみればよくわかる。 アイアイはその原産地・マダガスカルでは悪魔の使いとされており、忌み嫌われている。どれほど嫌われているかというと、一旦目撃すると、そのアイアイを殺さないと不幸になる、と言われていたくらいだ。そら、絶滅危惧種になりますわな。しかし、日では、軽快なメロディーの童話のおかげで、多くの人に好かれている。確かになんとなく不気味なんで、実物を見たら子どもは泣いてしまうかもしらんけど。タヌキなんかも微妙である。見た感じは愛くるしいが、かちかち山とかを読むと、人を化かすとんでもない生きもので極めて印象が悪い。 その点、マンボウは違う。世の中にマンボウが嫌いとか恐いとかいう人はほとんどおらんだろう。まぁ、マンボウのことなんか見た

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    ikeit
    ikeit 2017/09/02
  • 『OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び』 - HONZ

    私はいま38歳。ちょうど私が産まれたときの、父親の年齢になった。私が物心ついたときには、すでに父は膠原病にかかっていた。膠原病はタチの悪い病気で、いわゆる難病である。父の場合は、手足の血流が悪くなり、すべての指が大きくソーセージのように丸くふくれ、関節はこわばり、すべての爪と指のあいだには潰瘍ができていた。 指先を常に深く怪我している状態だから、何をするにも痛みが走る。そのため、指先を保護する布製の指サックが欠かせず、いつも家には何もの指サックが干されていた。夕方になると、父が「六一〇ハップ」を洗面器に貯めた湯に溶かして、指を浸けた。「六一〇ハップ」とは、硫黄分を多く含んだ入浴剤の一種である。危ないから絶対に触っちゃいけないと言われていたその入浴剤の容器の周りにこびりついた白い粉、湯に溶かしたときに部屋全体に広がる硫黄の独特の臭いは、数少ない幼少期の記憶のひとつである。 2016年夏、

    『OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び』 - HONZ
    ikeit
    ikeit 2017/09/02
  • 今週のニュースはこれを読め!8/26〜9/1 - HONZ

    『「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校 ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯』憎悪と暴力の渦の中で人間愛を失わなかった男

    今週のニュースはこれを読め!8/26〜9/1 - HONZ
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    ikeit 2017/09/02
  • 『科学捜査ケースファイル 難事件はいかにして解決されたか』凶悪犯罪と法科学の歴史200年 - HONZ

    科学捜査は、多くのミステリードラマや推理小説の題材として扱われてきた。代表的なのは、アメリカ発のテレビドラマ『CSI:科学捜査班』や『BONES─骨は語る─』シリーズだ。日でも『科捜研の女』が安定した人気を誇っている。推理小説は枚挙に暇がないが、アーサー・コナン・ドイルが1887年に発表した探偵シャーロック・ホームズ初登場作『緋色の研究』で、ホームズが行う綿密な現場検証や、「葉巻の灰による銘柄の同定」「血痕の試験」の話は、現在の科学捜査の原点といっても過言ではない。 このように馴染み深い捜査手法であるが、現実とフィクションが違うのもまた事実である。実際のところ、科学捜査官たちはあの非常線の向こう側で何をしているのか? そんな素朴な興味から、英国を代表する犯罪小説家である一方で、真実への欲求も強い著者は、一流の法科学者たちに話を聞く旅に出た。浮かび上がってきたのは、身の毛もよだつ凶悪犯罪に

    『科学捜査ケースファイル 難事件はいかにして解決されたか』凶悪犯罪と法科学の歴史200年 - HONZ
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    ikeit 2017/09/01
  • 『芸術・無意識・脳』人の心は、どこまで解明されてきたのか - HONZ

    我々はなぜ芸術に心惹かれるのだろうか。人間の心が脳の活動から生まれているのは間違いないが、芸術作品を鑑賞する時、我々の脳の中では何が起きているのだろうか。 書の表紙にもなっているクリムト(1862-1918年)の『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』の背景に溶け込んでいる人物の輪郭が分かるのはなぜか。ココシュ(1886-1980年)やシーレ(1890-1918年)の肖像画を観ると激しい情動的な反応が起きるのはなぜか。『モナ・リザ』の微笑みが神秘的に見えるのはなぜか。フェルメールの『音楽の稽古』で楽器を弾いている女性が誰に関心を持っているか分かるのは一体なぜなのか。 21世紀の科学における最大の課題のひとつが、人の心を生物学的に解明することである。そして、この難問を解く手掛かりが見えてきたのは、心の科学である認知心理学が、脳の科学である神経科学と融合した20世紀後半以降のことである。

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    ikeit
    ikeit 2017/09/01
  • 『健康格差 不平等な世界への挑戦』 Fair society, healthy lives. - HONZ

    スコットランドのグラスゴーの話。その市のなかの、たった数キロしか離れていないふたつの地区は、驚くべき対照を見せている。一方のレンジーは高級住宅街であるのに対して、他方のカルトンは指折りの貧困地区。ただし、両地区の違いはそれだけではない。1998年から2002年の数字で、レンジーの男性の平均寿命は82歳であったのに対して、カルトンのそれは54歳であった。その差はなんと28年である。 アメリカの話。ワシントンD.C.で地下鉄に乗って、中心街の南東部からメリーランド州のモンゴメリーへ向かうと、1マイル移動するごとに平均寿命が1年半ずつ延びるという。出発地点と到着地点では最終的に20年もの開きがあるという計算だ。 世界の話。子どもが日や北欧の国で生まれれば、だいたい80歳まで生きられるだろうと期待できる。しかし、サハラ以南のアフリカの国で生まれれば、60歳まで生きることすら難しいかもしれない。

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    ikeit
    ikeit 2017/08/31