「大物をやった!」と新米証券マンのバド・フォックスは叫んだ。1987年の映画『ウォール街』で、大物投資家のゴードン・ゲッコーを新しい顧客にした場面だ。それにしても、新米のバドが、競争の激しい株取引の世界でトップに君臨するゲッコーを、どうやって顧客に釣り上げたのだろう。自社のサービスの価値をまくし立てたのか、必殺の株情報を少しばかり提供したのか、それとも、すでにいた信頼できる顧客の名前をそれとなく出したのか。これはどれも正解ではない。 バドは、執拗なまでのアプローチを行い、「価値」を実際に届けることで、大物顧客を獲得した。バドがゲッコーに届けた「価値」とは、父から得た情報――まだ新聞に掲載されていない情報だった。その情報の「価値」により、バドはすぐさまゲッコーの片腕になったのだ。 新しいクライアントを獲得することがいかに大変かは誰もが知っている。注意を引くだけでも、たいてい「特別な何か」がな