8月の早朝、私は芝園団地の広場で、2人の中国人男性を待っていた。 本当に来てくれるだろうか。期待半分、不安半分の気持ちだった。広場ではこの日、団地の夏祭り「ふるさと祭り」のやぐらの組み立て作業が予定されていた。私は、一緒にやぐらの組み立てを手伝おうと、2人に声をかけていたのだ。 ふるさと祭りは、団地の自治会が中心となって30年以上続けてきた、住民手づくりの催しだ。なかでも2階建てのやぐらは、「こんなに大きなやぐらは、このあたりではうちだけだ」と住民が誇る、祭りのシンボルだ。 ただ、日本人住民の減少と高齢化で、数十人でやぐらの鉄骨を組み上げる作業は、大きな負担となりつつあった。一方、いまや5000人弱の住民の半数を占めるのが、都内に通勤するIT技術者などの中国人だ。祭りを楽しむ中心も、日本人住民から、団地や周辺に住む中国人住民に移りつつある。「日本人が準備や運営に汗をかき、中国人が楽しむ」と