目の前に、黒い塗りの可憐な椀が静かに置かれた。 「上質な漆の椀は、蓋を閉めると非常に密封性が高く、上下逆さにしても汁がこぼれないほど、精巧に作られているんです」 そう語るのは、京都で83年続く老舗の料亭、「木乃婦(きのふ)」の店主、高橋拓児(たくじ)さん。閉じ込められた「香り」は、食事をする人の目の前で解き放たれる。椀を開ける行為は、そこに華やかな舞台をつくり出す演出でもあるのだ。蓋を開けた途端、白い湯気が立ち上り、だしの香りがほのかに広がる。椀の中には、春の訪れを知らせるわかめと筍が並べられ、そこに木の芽がのっている。蓋を開けてから、食べ終えるまでの儚い芸術作品だ。 「季節によって、椀の形は変わるのですか」と尋ねると、高橋さんはうなずく。「香りと最も密接に関係しているのは湿度です。香気成分が空中の水分と結びついて空気中にとどまるからです。ですから夏の椀は広口で浅く、冬は乾燥していて気温が
「ワインにチーズ」「ワインに生ハム」。どちらも定番の組み合わせだ。しかし、「ワインに胡椒」と聞くと、どうだろう。日本では、胡椒をそのまま「食べる」という習慣は、ほとんどない。たいていは、料理の仕上げにパラパラっと振りかける程度ではないだろうか。料理の脇役的な存在が、ワインのお供になる。それが、この「塩漬け胡椒」だ。 白いごはんの上にパラパラと振りかけたり、とろけたチーズをのせたトーストの上にのせても美味しい。カルボナーラや酸辣湯麺にも相性抜群 COURTESY OF FOURSTONES この小さな粒をひとかじりすると、ぷちっと実が弾け、そのジューシーな食感に驚く。塩の辛味と胡椒特有の芳醇な味わいが口の中に広がり、同時にふわっとミントを思わせる爽やかな香りが鼻に抜ける。そして、ワインをぐびっ。この永遠に続く幸せなサイクル! チーズや生ハムと同等、いや、組み合わせの新鮮さという点では一歩抜き
宿泊券、ファッション、ビューティ、グルメなど選りすぐりの豪華プレゼントやイベントへのご招待など、T JAPANの最新情報をお届けします。 FOOD 革新的な調理法は、 世界から飢餓をなくすことができ るのか The Future of Food フランスで愛されている美食学のマッド・サイエンティスト、エルヴェ・ティス。自らが作り出した最も新しく革新的な調理法をひっさげて、この男は本気でこの世界から飢餓をなくそうとしている エルヴェ・ティスは使い古した革の鞄に、たくさんのガラス瓶をぐちゃぐちゃに詰めて持ち歩く。その中身が世界最大の難問のひとつを解決する答えだと、彼は信じているのだ。パリにある彼の研究室では、彼はフランスの国宝的存在として扱われている(ティスは1988年に分子ガストロノミーという学問分野を物理学者のニコラス・クルティらと共同で立ち上げ、現在は、フランス農学アカデミーの由緒ある食
COURTESY OF RAEN WINERY 今、ワインの世界で一番ホットな話題といえば、なんといってもカリフォルニアの「RAEN(レイン)」だろう。2013年にソノマ・コーストに設立されたワイナリーで、ピュアな果実味と繊細な酸味の“美しい味”で、早くも熱狂的なファンを増やし続けている。 「レイン」とは「Research in Agriculture and Enology Naturally」の頭文字をつなげた造語で、ブドウの樹の命の源となるRain(雨)を掛けている。ブドウ栽培では除草剤などの化学薬品はいっさい使わず、自然酵母を用いてゆっくりと発酵させる。昔ながらのブルゴーニュスタイルで造るワインは、ナチュラルで味わい深く、体にすっとなじむような感覚だ。 RAENのあるソノマ・コーストのぶどう畑。日照量が多い急斜面の畑は、朝には濃い霧に包まれる COURTESY OF RAEN WI
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