序 本論文の動機および目的 学校教育の現場で行われてはならないはずの体罰を、特に最近目の当たりにしたり、聞いたりすることが多くなった。 管理主義教育の現場では特定の教師(体育教師であることが多い)が下士官的役割を担わされ、時として心ならずも、やがて自発的に体罰におよぶことになる。 授業では秩序維持のために、スポーツ部活動では勝たんがためにしごき、体罰が行われている例がある。ある調査によれば、体罰を受けた者の8割が体罰に対して肯定的であり、少なくない者が自分が指導者であったならば体罰を行うと答えている。このように、体罰の再生産が現在でも起こっているのである。 なぜこのようなことが起こるのかを、体育指導(体育授業、スポーツ部活動、体育行事)での実態を通して、体罰の根源を文化的・構造的に明らかにするのが本研究の目的である。 第一章 先行研究と学校教育および体育指導について 1. 学校における体罰