1.はじめに 共同体概念の脱構築と再構築というテーマは、実は私がここ数年ずっと研究課題としているものです。ここで脱構築の対象となる「共同体」という概念は、「社会学の世紀」であった19世紀の社会学において、近代都市をモデルとする「市民社会」から「失われたもの」として「発見」された、「人格的な親密さや相互扶助を伴う道徳的・情緒的紐帯といった全面的な関係による凝集体で、等質な価値に充たされた集団」としての「共同体」です。 ジェラード・デランティは、「近代初期の思想では、コミュニティと社会は、事実上置き換え可能であった。つまり、コミュニティは『生活世界』という社会的領域、日常生活の生きられた世界を指していた。これらの領域は次第に分化していくが、17−18世紀には両者はほとんど同じ事柄を指すことが可能であった」[ デランティ 2006:13 ]と述べています。また、レイモンド・ウィリアムズも、当初、