前回に引き続き、今年も友人&奥さん&犬連れでアップルストア総本山のパロアルト店に並んでゲットしました、iPhone 3G。 もうiPhone自体についてはあちこちで語り尽くされていますし、今さら私が何かを付け加えたところで、いつも言ってることの繰り返しになってしまうのですが、もう一度あらためて伝えたいことがあります。 iPhoneは、1980年代にパーソナルコンピュータが登場して以来の、約30年ぶりに登場したパラダイムセッターであり、コンピュータ業界、ソフトウェア業界、ウェブ業界、モバイル業界、果てはゲーム業界まで、あらゆる関連セクタの向かう先をたった一つのプロダクトで決定づけてしまったモンスターデバイスです。 おい、そりゃいくらなんでも言い過ぎだろう、と言いたくなる方が多いのはわかります。今のiPhone 3Gを使ってみて、まぁそれなりに綺麗だし使い心地もいいしデザインもいいけど、普通に
ヨーロッパの中世を「暗黒時代」、すなわち「暴力と狂信と無知と停滞の時代」とする見方はすでに否定されている。確かに絶え間なく続く戦争と、キリスト教的世界観の浸透と、ローマ教会の支配が築かれ、ギリシア・ローマ時代の知識が少なからず一時的ながら失われた時代ではあったけれども、後に近代を切り開く土台となる様々な技術のささやかながら着実な革新が繰り返された、ゆっくりと着実な進歩の時代であった。その中世ヨーロッパのテクノロジーとイノベーションはどのようなものであったのか、緩やかな技術革命の千年を振り返る一冊である。 別に中世ヨーロッパが栄光の時代であったとか、産業革命に比肩する技術進歩の時代だったなどと言う訳ではなく、ただただ、後進地であったヨーロッパで中世の千年間で起きていた地道な技術的革新の歩みを描いているに過ぎないが、そこにドラマがあり、面白さがある。ジャレッド・ダイアモンドとかウィリアム・H・
1929年創刊のビジネス雑誌「ビジネスウィーク」が、創刊85周年を記念して過去85年間で最も破壊的なアイデアトップ85をランキングにした「The 85 Most Disruptive Ideas in Our History」を公開しています。ビジネス雑誌の作成したランキングだけあって経済用語のランクインも多いのですが、さまざまな分野から思いがけないものがランクインしまくっている点もポイントです。 85 Years, 85 Ideas - Businessweek http://www.businessweek.com/features/85ideas/ ◆01:ジェットエンジン By SuperJet International 「最も破壊的なアイデア」に選ばれたジェットエンジンの原理は以下の記事を読めばなんとなく理解できます。 GIFアニメでムーンウォークやジェットエンジンなどの原理が
中岡哲郎「近代技術の日本的展開 蘭癖大名から豊田喜一郎まで (朝日選書)」に日本近代技術史から見た西南戦争について端的にまとめられていて面白かったので、簡単に紹介しておきたい。同書については同じく中岡哲郎「日本近代技術の形成―“伝統”と“近代”のダイナミクス (朝日選書)」、石井寛治「日本の産業革命――日清・日露戦争から考える (講談社学術文庫)」とともに日本近代の持続的経済成長(いわゆる「日本の産業革命」あるいは「後発工業化」と呼ばれる)の過程についてなんらかまとめたいと思っているので後日がっつり紹介するつもり。戊辰戦争が終わり、明治新政府は富国強兵のスローガンの下、士族の解体から徴兵制の施行に至る国民軍の形成過程を突き進むことになるが、同時に各地に兵器工場の開設が計画された。明治三年(1870)に開設された大阪砲兵工廠もその一つで、後に東京砲兵工廠と並ぶ二大砲兵工廠へ発展していく。さて
今日の甲州は朝から雲が多めでした。朝晩はだいぶ冷え込みますね。 さて、少し前の記事ですが、アメリカのテクノロジー面での優位に水を指すような分析がありましたので、その内容の要約を。 === アメリカが「イノベーション大国」って本当? By イアモン・フィングルトン ●連邦議会は機能していないし、失業率は高すぎだし、アメリカのインフラは崩壊しつつある。それでも政治的に様々な見解を持つアメリカ人の全員が同意することが一つあるとすれば、それは「アメリカはハイテク分野で世界をリードしており、今後もこの状態が続く」という意見だ。 ●たしかにこれはアメリカ人にとって自慢でもあり、便利なアイディアだ。このシナリオによれば、中国はそれほど創造的ではないため、アメリカを追い抜けないことになる。イノベーションには民主制度が必要なのだが、中国は独裁体制だからだ。 ●たしかにアメリカは現代の世界を形作った多くのイノ
イシャンゴの骨は旧石器時代の計算に使われた棒だと考える人がいる。 計算機の歴史(けいさんきのれきし)の記事では、計算機(計算機械)やコンピュータの歴史について述べる。また、コンピュータは計算機械であるばかりでなく、同時に情報処理機械でもあるので、本項でも計算機械に限らずデータ処理機械にも触れる。あまり一般的な語ではないが「コンピューティング」の歴史だと捉えるとよいであろう。 人間がおこなう暗算以外の計算は、小石などをカウントしたことにはじまり、数字を書き記す技法が発展し、やがて手動操作をおこなう器具が生まれた。ネイピアの骨や算木、計算尺など、数学を応用した器具も作られた。一方、機械により器具のけた上がりなどを自動化するアイディアも生まれ、これが計算機械の原点である。より大がかりな計算を機械により自動化することが試みられるようになり、またアナログコンピュータも発達した。やがて電気工学が、次い
スティーム・パンクというのは、本来はSFの用語だ。 SFの源流は(定義にもよるが)19世紀に遡る。ジュール・ヴェルヌはフランスで1864年に「地底世界」、1865年「月世界旅行」、1870年「海底二万マイル」、1871年「洋上都市」など「空想科学小説」を次々に発表、機械技術がもたらす新たな社会の姿が空想逞しく描かれ始めた。 それから100年あまり、1980年前後に「サイバーパンク」をもじったジャンル名称として提唱されたのがスティームパンクである。 これは要するに、初期SFの作風に影響を受けて現代の作家が描いた「レトロフューチャー」だ。 ヴェルヌが描いたのは当時の知見に基づく「来たるべき未来の姿」である。対して、スティームパンクが描いているのは「来なかった未来」だ。蒸気機関が内燃機関にとって代わられ、電気技術が電子技術へと発展した現代社会ではなく、たとえば蒸気機関が主力のまま成長を遂げた社会
科学史や技術史とは一線を画する「工学史」という新しい領域を読む。 かなりの大著と思いきや、ポイントを絞ってコンパクトにまとめている。機械工学を中心に据え、細部は参考文献に任せ、キモのところを大づかみに伝えてくれる。おかげで、歴史・地理の両方から俯瞰的に眺めることができる。知のインデックスとして最適な一冊。 テクノロジー&サイエンスといえば、西洋の専売特許だが、長い目で見ると違う。ニーダム線図、ニーダム・グラフと呼ばれるグラフが顕著だ。歴史的には、長いあいだ中国こそが科学技術の先進国だったことは知っていたが、ここまであからさまだとは。 中国は古代から中世まで科学技術で世界をリードしていた。だが西洋は後期中世から急激に成長し、ルネサンスを境に両者の関係は逆転している。新参者にすぎない西欧が、なぜ中国を追い抜いたのか? もちろん科学と軌を一つにしてきた軍事面から説明できる。「戦争の世界史」を読む
書物が出版されること、(詳しく言うと)その準備ができることを、 「殺青(さっせい)ここに成る」 などと言う。 殺青とは、竹の表皮を火であぶって処理すること。 切ってきた青い竹には脂(あぶら)があるため、文字が書きにくい。 火であぶることでその脂をとり、文字を書きやすくするのだが、この処理をすることで虫の害を避けることもできる。 「殺青者、以火炙簡令汗、取其青易書、復不蠧、謂之殺青、亦謂汗簡。」(劉向『別録』)。 (殺青は火をもって簡を炙(あぶ)り汗せしめ、其の青を取りて書き易くす。また蠧(むし)まばれず。これを殺青と謂ひ、また汗簡と謂ふ。) 現代の中国語でも、映画のクランク・アップを「殺青(shāqīng シャーチン)」と言う。 『説文解字』(紀元100年/永元12に成立)に「竹帛に著す、これを書という」とある。 火で炙った竹は〈甲骨〉を継ぐ千年の長きにわたって使われた〈文字媒体〉だった。
5百万冊の本から学んだこと (TEDTalks) Erez Lieberman Aiden & Jean-Baptiste Michel / 青木靖 訳 2011年7月 (エレズ) ご存じと思いますが、1枚の絵は千の言葉に値すると言います。しかしハーバード大学ではこの点について疑問を抱きました。(笑) それで専門家のチームが編成されました。ハーバード大学、MIT、アメリカン・ヘリテージ英語辞典、ブリタニカ百科事典、それに我らがスポンサーGoogleも参加しています。そして4年間に渡って詳細な研究が続けられ、驚くべき結論が得られました。皆さん、1枚の絵は千の言葉に値するのではありません。我々の発見によれば、1枚の絵は5千億の言葉に値するのです。 (ジャン) いかにしてその結論に至ったのか? エレズと私は、人類の文化と歴史が時とともにどう遷移してきたのか概観できる方法に考えを巡らせていました。
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