「世界一流と仕事できてうれしいだろ?」 あるとき、同僚のポールと仕事をする機会に恵まれた。ポールはチームの初期からアーキテクチャ(情報システムの設計)をつくり上げてきたメンバーで、私が人生で出会った中でもっとも賢い男だ。何をやっても高速で丁寧、どんな問題が発生しても短時間で解決するその技術力はため息が出るほど素晴らしく、新しいアーキテクチャに関する論文をいくつも執筆している。 彼と仕事をし始めたとき、私のスキップマネージャ(2つ上の上司)が「世界一流のエンジニアと仕事できてうれしいだろ?」と誇らしげに声をかけてきた。自分は「もちろん」と即答したが、それほどまでに彼は社内評価も高いエンジニアなのだ。 ポールは私より頭の回転も速いし、記憶力も抜群に良かったが、同時にこう確信した。 「彼は人生で自分が会った中でもっとも賢い人だけど、それでも、自分と比べてとても追いつけないほど脳みその性能が違うわ