ある事情のため、『GATTACA(ガタカ)』をDVDで観る。もちろん初めてではない。というか、毎年講義で使っているので、何度目かわからないほど観ている。今年は震災の影響で講義数が少なく、そのため出生前診断について時間を割くことができず、授業での一部上映はしなかった。その代わりレポートの課題とした。 今回鑑賞し直したのは、それとは異なる事情のためである。 この映画が発表されたのは1997年。歴史的には、クローンヒツジ「ドリー」の誕生が発表された年であり、ヒトES細胞樹立報告の前年であり、ヒトゲノムの塩基配列決定のカウントダウンの時期だった。つまり、クローンをはじめとするバイオテクノロジーの人間への応用が間近なものであるというイメージが形成され、それが人々に不安を呼び起こし、その是非をめぐる議論が高まり始めた時期である。いま観ると、ちょっと違うかな、と思える部分がないわけではないが、1997年