公共の空間に体格の良い男が寝間着姿でいると、警戒してしまう。場における適切さに頓着しないというワイルドの宣言に受け取れるし、予定になかった外出を余儀なくされての不機嫌さも漂う。このマンションの一階は、他の階より一室少なく、あいた一室分のスペースがエレベーターホールに充てられており、それなりに広い空間に、造花のスタンドと、本物の観葉植物がいくつか、アームチェアが二脚と小さく低いテーブルが一台、置いてある。タオル生地の短パン、同じ素材のシャツを着て、椅子に浅く腰掛け、テーブルの上にサンダル履きの足を投げ出した男からは、防犯カメラ越しの不鮮明な映像でも、不機嫌さが伝わってきた。いざとなったらすぐに暴力を行使するぞ、と意気込んでいるようにも見える。 一階の掃除は終わっていたので、しばらくはホールに近づかないが、一時間に一度行う巡回では、エレベーターを使う。15階まで徒歩では登れない。巡回を省略する
