→紀伊國屋書店で購入 安部公房の母、ヨリミが新婚早々安部公房を妊娠中に書いた小説である。 ヨリミは1899年、旭川のはずれの開拓地東高鷹村に生まれ、東京女子師範学校(現在のお茶の水女子大)に進むが、社会主義団体のビラを校内にはりだしたために放校になる。1923年、24歳の時に同郷の安部浅吉と結婚するが、押しかけ結婚だったという説もあり、相当はねっかえりのお嬢さんだったようである。浅吉は満州医科大学附属病院の医師だったが、たまたま東京の栄養研究所に留学中だった。新婚の二人は府下滝野川区で暮らしていたが、9月に関東大震災にあう。結婚、妊娠、地震があいついだ慌ただしい年に書かれたのが本書である。 『スフィンクスは笑う』という題名からまず思いつくのはスフィンクスの謎かけである。「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足の生き物はなにか」という例のあれである。 答えは人間ということになるが、本書にも三つの