快楽のデーターベース化 「ヘタレ化」を語るときに、避けては通れないのが、「動物化」である。東の「動物化」では、テクノロジーの発展が決定的な意味をもつ。 【東】 僕はすべての根幹には「工学的な知」の問題があると思うんです。産業革命以降、私たちの世界では工学的な知の重要性がどんどん上昇している。この二世紀のあいだ世界を変えたのは、実は文学部でも理学部でもない、工学部の力だったんですよ。そしてその力はいまも拡張し続けている。経済学は金融のエンジニアリングになってしまっているし、ヒトゲノムのデータベースが整備されれば、医療もエンジニアリングになっていくでしょう。脳科学や認知科学が進んでいけば、私たちの意志や信念もエンジニアリング的に説明されていく可能性がある。実際、薬物や洗脳の問題というのは、まさに私たちの脳が工学的に操作可能だから起きるわけです。 社会のデータベース化や主体の動物化という現象は、