→紀伊國屋書店で購入 「身体論が拓く可能性」 本書は全8章からなる。どの章も興味深いが、ここでは、評者が特に惹かれた第2章と第8章に焦点を当ててみたい(各章のタイトルと著者は文末に記した)。 これはまったくの一読者としての感想にすぎないが、身体表象をテーマにしたアンソロジー(複数の著者によって書かれた本)を手にとったとき、まず全体の統一感が欠けていることに戸惑いを覚えることがある。そして次に、「それぞれの章がどのように関連しているのか」「全体を通じて何を主張したいのか」といった疑問が次々に生じることがある。それは著者によって「身体」が指すものに幅があることに加え、その表象の分析手法が多様であることにもよるのだろう。 だが、本書にはそのような戸惑いや困惑を感じなかった。そこからは編者と著者間、著者相互の綿密な打ち合わせや用語、分析対象の擦り合わせの跡がうかがえる。映画用語集(小野智恵)が巻末