いやもう、ほんとにね、びびったんですよ。 ニューヨークに初めて行ってね、雪深くて足下の悪い街中をしゃくしゃくかきわけながら、大学キャンパスの中の図書館に入らせてもらってね、なんかわかんないけど階段や通路を上り下りしていった先の、しずかーな書庫の中に、ずらーっと並んでるんですよ。 日本語の本が。 国文学の棚だったんですけどね、そりゃもう、たくさんなんて話じゃないですよ。あたりまえの日本の大学図書館みたい、いや、それどころの騒ぎじゃない。当時あたしはまだ京大で図書館員やってましたけど、例えば源氏物語の注釈書なり大御所的な研究書なりの品揃えだったら、京大の附属図書館の本棚なんかとてもとても、ここの品揃えの足下にも及ばない。いや、附属なんか相手じゃない、京大の文学部のほうの図書館の本棚と充分にいい勝負ができるくらいに、源氏物語関係の本がそろってる。そういうレベルですよ。 まさにその通りですよ、本書