福井大教授が、学術論文の審査(査読)を担った千葉大教授と協力し、自分の論文の査読に自ら関与する「査読偽装」をした疑いが毎日新聞の報道で発覚した。疑義がある複数の論文のうち1本が出版社の判断で撤回される事態となった。国内には過去に例がない研究不正で、現状では野放しになっている。国は早急に対応すべきだ。 「査読の過程で著者と査読者の間で不適切なやり取りがあった。査読は適切ではないと結論付けた」。オランダの学術出版大手エルゼビアが6月24日、福井大教授らの論文を撤回した理由をホームぺージ上で説明した。編集者は不正を見抜けなかったことを謝罪し、「査読の操作は出版倫理に明らかに違反している」と教授らを厳しく批判した。
兵庫県立大の中浜直之講師(保全生態学)が、自身が執筆して国際学術誌に掲載された昆虫の遺伝情報に関する論文を、インターネット上の別の学術誌に全文盗用される被害に遭った。盗用論文は中浜講師の論文を一言一句そのまま転載し、論文のタイトルと著者名を変更していた。また、盗用論文を掲載していた学術誌は全論文が別の論文を全文盗用していたことも判明した。 ずさんな審査や手法で論文を掲載する粗悪な学術誌は「ハゲタカジャーナル」(ハゲタカ誌)と呼ばれ、問題化している。ネット上で無料公開されている学術誌の一種で、論文の著者から徴収する掲載料を目的としており、近年増え続けている。 ハゲタカ誌の特徴は、著者とは別の研究者による論文の審査(査読)が不十分▽著名な研究者を編集委員として無許可で記載▽出版社の所在地が不明――などとされ、著者が掲載料を払えば論文がそのまま載ることもある。研究者は研究論文が学術誌に掲載されな
24日午後11時45分ごろ、三重県鳥羽市鳥羽で火事があり、3階建てビルと周辺の木造家屋計7棟が焼失、1人の遺体が見つかった。 ◇ 「鳥羽市の貴重な宝物が一夜で消えてしまった」 真っ黒に焼け落ちた「江戸川乱歩館~鳥羽みなとまち文学館」を前に、同市文化財専門員の野村史隆さん(73)は、こう言って立ちすくんだ。同館は、探偵小説の先駆者、乱歩(1894~1965年)と親しく交流した岩田準一(1900~45年)の自宅と書斎、蔵、展示館の4施設からなり、自宅と書斎が全焼した。未整理の資料がたくさんあったといい、野村さんは「調査にかかろうとした矢先の火災。残念だ」と肩を落とした。 江戸川乱歩館は2002年、木造2階建ての岩田の自宅を改装してオープンした。岩田は伊勢志摩の習俗や男色に関する研究に没頭し、「志摩の海女」「本朝男色考・男色文献書志」などを出版する一方、乱歩のほか、博物学者の南方熊楠、詩人の竹久
研究者の参加料収入が目的とみられる粗悪な国際学会が、新型コロナウイルスの流行に伴いインターネット上で「バーチャル学会」を開催している。こうした粗悪な学会は「ハゲタカ学会」と呼ばれ、世界各地で開かれていた会合が、オンライン化された形。研究者は渡航費を負担することなく、より手軽に「国際学会で発表した」という研究業績を得られるようになった。専門家は研究者らに注意を呼びかけている。 国際学会での発表は、学術誌での論文発表と共に研究業績の一つに数えられる。通常の学会主催者は、発表に値するか発表概要を事前に審査するため、参加が難しい国際学会も多い。一方ハゲタカ学会は、掲載料を目的にずさんな審査で論文を掲載するネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」(ハゲタカ誌)と同様にチェックがずさんで、実質的には参加料を支払えば発表できる。 ハゲタカ学会の特徴は、無関係の複数分野にまたがる学会を合同で開く▽参加
<三重(みえ)~る経済> 私にとって図書館は身近な存在だ。お小遣いで買える本には限りがあり、学生の頃は時間も忘れて読みふけっていた。また、さまざまな作家との出会いをくれたかけがえのない場所でもある。 しかし、文字離れが進み、電子書籍が普及するなかで、最近では図書館を不要とする声も聞かれる。2019年度の三重県立図書館の来館者数は27万人で、15年度と比較して15・7%の減少となった。20年度はコロナ禍で図書館離れが一段と進んだ。書籍そのものが不特定多数の人が触れる共有物であり、来館を前提としていることが要因になっている。 そのようななか、図書館を訪れることの楽しさや、司書と利用者のつながりを少しでも感じてもらうため、全国ではユニークな取組が行われている。栗東市立図書館(滋賀県)で行われた「一行の図書館」。タイトルやジャンルが分からないように包まれた本に、司書が選んだ本のなかの一行が記載され
文部科学省は20日の参院内閣委員会で、全国30の国立大学が2020年度、授業料の免除を申請した学生の個人情報を記録したファイルを外部に提供しようとしていたと明らかにした。デジタル庁創設や個人情報保護法改正を盛り込んだデジタル改革関連法案の審議の中で、共産党の田村智子参院議員の質問に答えた。大阪大や北海道大は障害者の家族の有無や生活保護の有無などを記録したファイルを提供対象にしており、個人情報保護のあり方が問われそうだ。 国が保有する個人情報については、国の機関が情報提供できるファイルなどの一覧を示し民間からそれらを使った利活用の提案の応募があった場合、審査を経て提供する仕組みが17年度からスタートしている。
三重県議会は23日、LGBTなど性的少数者であることを本人の許可なく第三者に暴露する「アウティング」や、カミングアウトの強制を禁止する条例案を全会一致で可決した。当事者を傷つけ、人間関係や就労環境が不安定になる不当な行為をなくす狙い。アウティングを禁止した条例は、東京都国立市などが施行しているが、都道府県では初めて。施行は4月1日。 条例は目的を「性の多様性を認め合う社会の実現」と掲げ、性的指向や性自認について「本人の意に反して正当な理由なく暴露してはならない」「性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない」と規定した。県民にはそうした差別のない社会の実現に努力し、県の施策に協力するよう求め、県内の市町や教育機関には必要な措置を講じるよう努める役割を明記した。いずれも罰則規定は見送った。
図書館の活用法や今後の役割などについて考えるシンポジウム「図書館でできること、図書館ができること」が2月21日午後1時15分から、名張市桜ケ丘の市立図書館で開かれる。参加費無料。事前申し込みが必要で定員30人。 シンポは講演とパネルディスカッションの2部制で、講演は皇学館大の岡野裕行准教授が「これからの図書館に求められるもの」と題して基調講演を行い、奈良大の嶋田学教授が先進的な事例報告を行う。 岡野准教授はお気に入りの本を紹介し、書評の技術を競う「ビブリオバトル」普及委員会代表理事を2015年から務めている。嶋田教授は先進的な活動に取り組む図書館を顕彰する「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー」(NPO法人「知的資源イニシアティブ」主催)の大賞に選ばれた瀬戸内市民図書館(岡山県瀬戸内市)の開設に尽力し、館長も務めた。
原電が提出した資料を確認する原子力規制委の担当者ら=東京都台東区で2020年12月14日午前9時43分、西夏生撮影 日本原子力発電(原電)が、敦賀原発2号機(福井県敦賀市)の再稼働に向けた安全審査の資料を無断で書き換えていたことを受け、原子力規制委員会は14日、原電本店(東京都台東区)で調査を始めた。原子炉等規制法に基づき、15日まで関係文書を確認したり原電社員から説明を聞いたりする。安全審査上の問題で、社内への立ち入り調査は異例だ。 規制委の事務局を担う原子力規制庁の職員は午前9時半ごろ、原電本店があるビルに入っていった。調査の状況により今後、敦賀2号機への立ち入り調査もする方針という。更田豊志委員長は「調査で、原電の考え方をつまびらかにできれば」と話している。
「秋の行政事業レビュー」で、中小企業支援策について予算執行の無駄や事業の効果を公開で検証する河野太郎行政改革担当相=東京都千代田区で2020年11月15日午前11時6分、吉田航太撮影 国の予算執行の無駄や事業の効果を点検する「秋の行政事業レビュー」は15日、再生可能エネルギーや薬価算定のプロセスなどについて議論し、公開検証の全日程を終えた。4日間で13分野を議論し、高速実験炉「常陽」(茨城県)の再稼働に「待った」をかける厳しい提言も出されたが、全体としては効率化や改善を促す程度にとどめる内容が目立った。今後は来年度予算案にレビュー結果がどのように反映されるかが焦点になる。【田辺佑介、原田啓之、高橋祐貴】 「そこだけはっきりして」詰め寄る河野氏 4日間では各分野への改善要求が相次ぎ、会場の空気が張り詰める場面もあった。レビュー3日目の14日、日本原子力研究開発機構が再稼働を目指す「常陽」(茨
新型コロナウイルス感染拡大の中で人気を集めている妖怪アマビエ。そのルーツ解明の手がかりとなる妖怪を記した史料が、岐阜県大垣市が所蔵する旧旗本家関連の史料に残されていた。その名はアマビエならぬ妖怪「アマヒユ」。姿は似ていないが、研究者は「アマビエ誕生の謎に迫る貴重な史料」としている。 長い髪を持ちウロコに覆われたアマビエは、1846(弘化3)年4月中旬と日付の入った瓦版「肥後国海中の怪」(京都大学付属図書館所蔵)に登場。江戸後期に肥後国(現在の熊本県)に現れた「病よけ妖怪」として注目を集めるが、その人気に反して、現在、確認されているアマビエの姿などが描き残されている史料はこの瓦版たった1枚という謎の多い妖怪だ。 アマビエと同じ「予言する妖怪」が描き残されていたのは、江戸期に同市周辺を治めた旧旗本西高木家が所蔵していた「高木家文書」。妖怪の絵とともに残された記述には1846(弘化3)年5月の日
茨城県の大井川和彦知事は20日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、県民には東京都内へ、都民には県内への不要不急の移動自粛を要請した。都内の感染状況を示す県の指標が4段階で最高レベルに達し、都内の市中感染の恐れが高まったと判断した。 県は感染者数や医療提供体制など六つの指標に基づき、県内全体の感染状況を4段階で把握し、対策を講じてきた。都内の感染状況を示す直近1週間の感染経路不明者の平均値は19日時点で110人となり、指標のステージが3から4に上がった。 大井川知事は、都内への移動や滞在について10日の段階では「慎重な対応を」と述べていたが、この日は「状況が著しく悪化している」と自粛要請を明確にし、都内への通勤・通学者には会食や大規模イベントへの参加を控えるなどの対策を講じるよう求めた。ただ、県内の医療体制や感染者数などの他5指標はステージ2以下で、総合的な県内全体の感染状況はステージ
法務省が、検察官にも国家公務員法の定年延長規定が適用されるとした解釈変更について、省内の会議や内閣法制局などとの打ち合わせに関する文書を保存していなかった。毎日新聞が2020年2月、政府が前月末の閣議で、黒川弘務東京高検検事長の定年を延長したことなどを踏まえて関連文書の開示を請求したのに対し、法務省は「請求時点で議事録などは省内にない」と回答した。定年延長は国会で審議中の検察庁法改正案で明文化されているが、法改正の基礎となる解釈変更の「意思決定過程」は不透明なままだ。 公文書管理法4条は「行政機関の意思決定過程の合理的な検証」を可能にする文書作成を義務づけている。毎日新聞は2月17日、法解釈変更の経緯を検証するため、検察官の定年延長に関して「法務省内部の検討、および法務省と首相、内閣官房、内閣法制局、人事院との面会、打ち合わせ、会議に関する文書一式」の開示を請求した。 法務省が4月22日に
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、大学の図書館や国立国会図書館の閉鎖が続いている。有志グループがこうした状況を受け、主に文系の学生や研究者を対象にアンケートをしたところ、約6割が研究に「非常に重大な影響がある」と答えた。学位論文を今年度内に提出する必要がある学生の7割は「論文の提出時期に間に合わない」と回答。必要な文献を参照できない研究現場の窮状が浮かんだ。 アンケートは「図書館休館対策プロジェクト」がインターネットを通じて、4月17~30日に実施。大学院生や大学教員ら2519人から回答を得た。専攻は人文学と社会科学が85%を占めた。自然科学誌は電子化が進む一方、人文・社会科学系の文献はネット上で閲覧できないことが多く、図書館閉鎖の影響が顕著に出ているとみられる。
学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題で自殺した近畿財務局の職員の手記や遺書が公表されたことについて記者団の質問に答える安倍晋三首相=首相官邸で2020年3月18日午後6時50分、川田雅浩撮影 安倍晋三首相は18日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の公文書改ざん問題を巡り、自殺した財務省近畿財務局の職員の遺書に佐川宣寿理財局長(当時)の指示だったと記されていたことに関し、「大変痛ましい出来事で、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたい」と語った。そのうえで「財務省で麻生…
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