新型コロナウイルスの感染拡大は、世界経済に激震を起こしている。欧米では、疲弊に耐えかねたように一部で経済活動再開の動きが出るが、感染のさらなる拡大に対する不安は強い。経済か生命か。さらに感染者激増で医療崩壊も現実になりつつある中、誰を優先して救うのかという問題も大きくなっている。人類に突きつけられた重い課題を、生命倫理学が専門の児玉聡・京都大学大学院准教授に聞いた。 新型コロナの感染拡大が欧米で止まらない中、一部地域で経済活動再開の動きが見えます。感染拡大が抑制されてきた、もともと感染が少ない地域からということですが、懸念は残ります。突き詰めれば経済と人命を比較するような問題をはらんでいます。 児玉聡・京都大学大学院准教授(以下、児玉氏):私の専門の生命倫理学は、先端的な医療や医学が個人と社会にもたらす問題を考えるという学問です。例えば、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って精子や卵子を作