書評家・作家・専門家が《新刊》をご紹介! 本選びにお役立てください。 (評者:東畑 開人 / 臨床心理学者、白金高輪カウンセリングルーム 主宰 http://stc-room.jp/ ) はじめに断っておく。広い読者に向けられた本でもあるけれど、ひとりの心理士として書きたい。この書評の題は、そういう思いからつけたものだ。 私は信田さよ子を知らなかった。不明を恥じる。だけど、私だけじゃない、と言い訳したくなる。誰も信田さよ子を知らなかったのではないか。 もちろん、みんなが信田さよ子を知っている。それもわかっている。彼女はおそらく、日本で最も有名な心理士だ。アディクションとDVの第一人者であり、数えきれないほどの本を書き、多くの良き読者がいる。 それでも思う。信田さよ子は孤独ではなかったか。この25年間、彼女はたった一人で体系を編み上げ、オルタナティブな臨床心理学を構築してきたのではなかっ
私は精神科医として、坂口恭平の多方面にわたる活動を興味深く見守ってきた。坂口は双極性障害の当事者なのだが、一貫して現在の精神医療のあり方を批判しており、独自に編み出した自己治療の手法を著作などで紹介している。そうした彼の活動を快く思わない一部の精神科医がいることは承知している。これでは真面目に治療に取り組んでいる——医師の指示通りに通院服薬を続けている——患者を混乱させてしまう、というわけだ。 私も精神科医の端くれだから、彼らの言い分はわからなくはない。しかし、その批判が当たっているとは思わない。逆に問いたい。そういうあなたは、ガイドライン通りの治療法で、一体何人の双極性障害患者を寛解に持ち込めたのか?と。私? 自慢ではないが、改善事例は多々あれど、きれいに寛解して治療終結、という事例はいまだ記憶にない。しかし坂口氏の自己治療は、少なくとも彼自身の状態を寛解に持ち込み、現在は薬物を服用せず
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