哲学者・谷川嘉浩さんの『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』(ちくまプリマー新書、2024年4月10日初版発行)が、学びになりました。衝動とは、自分でもコントロールできない、人生の針路を変えてしまうエネルギーのこと。これは人間内部から起こるモチベーションとは必ずしも一致しなくて、外部からやってくるものでもある。タイトルはポジティブですが、私はこれは、事故やトラブル、予期せぬ人生の転機に「それでも」生きるための手掛かりを教えてくれる本として読みました。 衝動とは何か。著者は、天動説全盛の時代に地動説を探究する研究者の卵を主人公にしたマンガ『チ。』を鍵となるメタファーにして、次のように説明します。 自分でもコントロールしきれないくらいの情熱、過剰なパッション、非合理な欲動、直感ーー。こういう言葉で指し示そうとしているのは、やむにやまれぬ感覚、つまり合理的な説明のつかない衝動のことです。理屈で
飛んでくる「マサカリ」をどう受け止めるか。鹿野壮が実践する「アウトプットを守る」3箇条 2024年1月17日 フロントエンドエンジニア 鹿野 壮 九州大学芸術工学部音響設計学科卒業。現在はUbie株式会社に勤務している。とくにTypeScript・CSSが好きで、暇があればコードを書いている。勉強会・技術SNS・Twitterなどで積極的に技術情報を発信中。 CSS Nite 2017〜2019ベストセッション受賞。 X(@tonkotsuboy_com) Github ホームページ アウトプットをするときの悩みとしてよく聞くのが、アウトプットをしたいが「マサカリ」が怖くてできない、ということです。 私自身も、アウトプットを始めたころは、そういった「マサカリ」に対して悩み、アウトプットや人間関係自体が怖くなることがありました。今でも「マサカリ」は怖いですが、アウトプットの品質や「マサカリ」
以下の文章は『新潮』2023年10月号に掲載されたものです。編集部の許可を得て全文公開します。 —– 「立岩真也の思い出」 2006年から龍谷大学で職を得て働き始めたのだが、たまたま縁があって、2017年の4月から立命館大学大学院の「先端総合学術研究科」というところに移籍することになった。正式に移籍することが決まる前に、京都駅のホテルグランヴィア京都のカフェラウンジで立岩真也と会った。それまでも、先端研にはいろいろとお世話になることがあり、何度か博論の口頭試問などで挨拶はしていたのだが、グランヴィアのラウンジで立岩真也とはじめてサシでゆっくり喋ったのだった。 立岩真也は戦後の日本の社会学が生み出した最大の天才だと思う。テレビに出たりして、一般向けに有名なひと、というのはほかに何人かいるが、立岩は膨大な量の論文と本を書き、おそらく社会学のものとしては世界最大級のアーカイブをネットに築き、立命
『陋巷に在り』『泣き虫弱虫諸葛孔明』といった、中国に題材を取った小説で知られる作家の酒見賢一が11月7日に死去した。ネットにはまだ59歳だったのかといった驚きや、『泣き虫弱虫諸葛孔明』とTVドラマが放送中の『パリピ孔明』との関係を類推する声がずらりと並んだ。わけてもデビュー作『後宮小説』が、後の『十二国記』や『彩雲国物語』、そしてこちらもTVアニメが放送中の『薬屋のひとりごと』にもたらした影響を問う声が多くあって、中華風のファンタジーやミステリで盛り上がる今の小説状況を、30年も前に拓いた作家として再注目が集まっている。 『後宮小説』は酒見賢一のデビュー作で、1989年に第1回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して刊行され、第102回直木賞の候補にもなった。「腹上死であった、と記載されている」という驚きの書き出して始まる小説は、そうした死因による皇帝の崩御から始まり、次の皇帝即位に向けて新し
ブログで継続的に読書記録を投稿しているが、それを見たツイッターの人から、「バーニングさんはいったいいつ本読んでるんですか?」と聞かれることがたびたびある。これまでに様々な人から何度も寄せられた質問なので、いつかちゃんとまとめようと思っていた。だいぶ長く宿題にしていたので、今回この宿題に向き合いたいと思う。 なお学生時代の友人である幻影くんも同じような質問を受け、ブログに回答を残している。自分の回答はやたら長くなったが彼の返答はコンパクトであるため、読みやすい。そちらもぜひご覧いただきたい。 タイトルに書いたように、「フルタイム労働と読書をいかに両立しているか」を軸に書こうと思う。簡単にプロフィールを書くと、33歳の男性・独身子なしなので、同世代の多くが直面している育児時間はほとんどない(妹が帰省したときに甥っ子の相手をするくらい)。そのため、参考になる部分とならない部分があると思うが、ハウ
『自由論』『功利主義』で知られるJ. S. ミルとは何者だったのか。教科書に必ず出てくる思想家だが、何がすごいのか。 実はその生涯は波瀾万丈、思想の中身は150年後のSNS時代でも古びない鮮烈なものだった――! 没後150年にあわせて刊行された中公新書の評伝『J・S・ミル――自由を探究した思想家』の著者であり、岩波文庫版『自由論』『功利主義』の翻訳者でもある政治哲学者の関口正司氏が解説する。 ※本記事は関口正司『J・S・ミル――自由を探究した思想家』から抜粋・編集したものです。 9人兄弟の長男として誕生したJ. S. ミル イギリスの首都ロンドンの主要な鉄道ターミナルのひとつに、キングスクロス駅がある。市内の北部に位置し、近いところではケンブリッジなどイースト・アングリア各地、遠くはエディンバラをはじめスコットランドの諸都市に向かう列車の始発駅である。「ハリー・ポッター」シリーズのファンに
今回のゲストは文筆家の鈴木大介さんです。子どもや女性、若者の貧困問題を精力的に取材執筆するルポライターとして活躍していましたが、41歳のときに脳梗塞を発症。以降は後遺症である高次脳機能障害を抱える当事者として、闘病記や自らの障害受容について執筆活動を続け、2020年には『「脳コワさん」支援ガイド』(医学書院)で日本医学ジャーナリスト協会賞大賞を受賞します。 近年は女性の生理への理解の必要性や、夫婦関係やパートナーシップを取り巻くジェンダーバイアスへの違和感について発信し続け、多くの女性読者の共感を得ています。男性である鈴木さんが一体なぜ、現在のスタンスに至るようになったのでしょうか?(この記事は全2回の1回目です) 世界がぐちゃぐちゃに壊れていく 鈴木さんに脳梗塞の予兆が現れたのは、2015年2月。原作を担当していた漫画連載のシナリオ打ち合わせを16時間ぶっ通しで行った後、左指が動かなくな
第128回文學界新人賞 受賞作品「ハンチバック」 親が遺したグループホームで裕福に暮らす重度障害者の井沢釈華。Webライター・Buddhaとして風俗体験記を書いては、その収益を恵まれない家庭へ寄付し、Twitterの裏垢では「普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢」と吐きだす。ある日、ヘルパーの田中に裏垢を特定された釈華は、1億5500万円で彼との性交によって妊娠する契約を結ぶ――。 療養生活という名の引きこもり 取材は市川さんが両親と暮らす自宅で行われた。お母さんに案内された部屋で、市川さんと目が合った瞬間、その射貫くような眼差しに気圧された。市川さんは筋疾患先天性ミオパチーという難病により、人工呼吸器を使用しているため、発話に大変な体力を使い、リスクもある。そのため取材も、あらかじめメールで回答をもらい、補足のみ、最小限お話いただく形をとった。 目力の強さはそれが市川さ
ひとりのお兄ちゃんの話から始めたい。 2019年6月1日、東京都練馬区で一件の殺人事件が起こる。農林水産省の元事務次官・熊澤英昭(当時76)が、長男の英一郎(44)を自宅で殺害したのだ。英昭は息子の首と胸を包丁で何度も刺し、やがて動かなくなったことを確認すると、みずから警察に通報した。父親は「引きこもりがち」の息子から家庭内暴力を受けており、逮捕当時、彼の身体には殴られたとみられるアザがいくつもあったという。 英昭は警察の取り調べに対し、息子の殺害にいたった直接的な動機として、その直前に起こった別の殺傷事件を引き合いに出している。孫引きのかたちになるが、磯部涼によるルポルタージュ『令和元年のテロリズム』(2021)から引用しよう。 〔…〕犯行当日は熊澤邸に隣接する練馬区立早宮小学校で朝から運動会が行われていた。英一郎はその音に対して、「うるせえな、ぶっ殺すぞ」などと発言したという。英昭は「
Wayne Shorter emerged in the 1960s as a tenor saxophonist and in-house composer for Art Blakey’s Jazz Messengers and the Miles Davis Quintet.Credit...Francis Wolff/Blue Note Records Wayne Shorter, the enigmatic, intrepid saxophonist who shaped the color and contour of modern jazz as one of its most intensely admired composers, died on Thursday in Los Angeles. He was 89. His publicist, Alisse Kings
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く