「#1407. 初期近代英語期の3つの問題」 ([2013-03-04-1]) や「#2580. 初期近代英語の国語意識の段階」 ([2016-05-20-1]) の記事で指摘したように,16世紀後半までは,著者は本を書くのに英語を用いることに関して多かれ少なかれ apologetic だった.それが,世紀末に近づくと英語に対する自信が感じられるようになり,17世紀には自信をほぼ回復したようにみえる. とはいえ,長い歴史と伝統と威信のあるラテン語が,書き言葉からすぐに駆逐されることはなかった.ラテン語は,聖書や教会関係の権威ある言語として確たる地位を保持していたし,学術の言語としてヨーロッパの国際語でもあった.外国人向けの英文法書ですらラテン語で書かれていたほどである.著者は,このような分野の著作においてその名を後世に残したいと思えば,いまだラテン語で書くのがふさわしいと感じていたのである