トランプ後のアメリカ音楽はいかなる変貌を遂げるのか――。激変するアメリカ音楽の最新事情を追い、21世紀の文化=政治の新たな地図を描き出す! 2015年12月、ある映画をめぐってアメリカの二人のアーティストが論争を繰り広げた。『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)や『マルコムX』(1992)の監督として知られるスパイク・リーの作品でシカゴを舞台にした『シャイラク』が公開された際、同市出身のヒップホップミュージシャン、チャンス・ザ・ラッパーがSNS上で噛みついたのだ。 「シカゴ出身のひとりとして個人的に言わせてもらえれば、僕たちは地元でこの映画を支持していない」「あんなものはここではまったく愛されていない。滑稽な作品だし、あれをサポートしようと言っているのは地元の人ではない」「あの作品を作った連中は “命を救う”ためにそうしたわけじゃない。搾取しているし、問題のある作品だ」「しかも、女性たち