2021年02月13日17:07 カテゴリ本 森鴎外はなぜ麦飯を否定したのか コロナをめぐる日本の論争をみると、医学界の権威主義の根強さを感じる。物理学のように明快な理論と実証データがない医学では、グレーな問題は学界の権威で決めざるをえない面があるのだろうが、それに加えて日本の医学界では学閥や役所の権威主義が強い。 その弊害を示す歴史的な事例が、森林太郎(鴎外)が脚気を感染症と誤認した問題である。日露戦争では白米を主食とした陸軍の戦傷病死3万7000人のうち、2万8000人が脚気によるものと推定されている。戦死者の3倍が脚気で死亡する惨憺たる状況だった。 それに対してパンを主食とした海軍では、脚気は皆無だった。海軍省医務局長の高木兼寛はイギリス海軍にならってパン食を採用し、遠洋航海で多発していた脚気を絶滅した。その因果関係は当時はまだわからなかったが、イギリス的経験主義で実利的な解決策をと