川合 隆男, 2002, 『近代日本社会学の展開: 学問運動としての社会学の制度化』恒星社厚生閣. 戦前の日本社会学の歴史を学会活動の側面に焦点を当てて記述した本。学説史なので、とうぜん書き下ろしと思っていたら、実際には既発表論文を集めただけのもので、重複やミッシング・リンクが多く、やや期待外れ。確かにこれをきれいに1つの「歴史」として語りなおそうとすると、書きおろしたほうが早そうなので、論文集というかたちで出版した著者の心情は理解できるが、私は「歴史」本には物語性を期待するので、残念だった。学説史はしばしば思想史の体裁をとることが多いが、この本は、学会という制度的な活動に注目する点に特徴がある。第2次世界大戦の前の主要な社会学関連の団体は、表1のとおりである。 表1 戦前の社会学関連団体 組織名 存続期間 主導的設立メンバー 社会学会 1896--1898年 布川孫一、高木正義、加藤弘之
何かと話題の吉田修一『悪人』を読んだ。私は吉田の「パーク・ライフ」をまったく評価していないし、『パレード』もどうということはなかった。前者は芥川賞、後者は山本周五郎賞受賞作で、『悪人』はある意味最高峰の一つである大佛次郎賞、そして毎日出版文化賞を受賞している。大佛賞は、学者であれば60過ぎの大物でなければ貰えないものである。といっても吉田は受賞時41で、同年で受賞した学者もいる。 『悪人』は、ほぼ予想どおり、通俗小説であった。推理小説というより犯罪小説で、人情話でもある。しかしこのところ、純文学作家が、宮部みゆきばりの犯罪小説を書くというのがはやっているのは、純文学の行き詰まりの一端を示していると言えよう。実際これを、作者名を隠して読ませたら、多くの人が宮部と答えるのではないかとすら思う。 長編推理小説にはどれでも一つはミスがあると言われるが、これの場合、ほとんど現代版『砂の器』で、殺人の
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