10代の頃は、明らかに香川より柿谷だった。だが、いつしか2人の 立場は逆転してしまう。未熟さゆえの挫折を経験した22歳は、 遥か先を行く香川の姿に何を思うのか。関係者と本人の証言から、 天才の葛藤に迫る。 アスリートにとって、才能とはなにか――。 フジタ工業や大塚製薬でプレーし、引退後は横浜マリノスのユース監督などを経て多くの逸材に接してきた中田仁司は、この問いかけに対する明確な答えを持てずにいた。アスリートが成功するかどうかは、それぞれの時代や環境、運にも左右されるからだ。だが、その少年を「天才」と呼ぶことには迷いがなかった。 「ひとことでいえば、まだ子供なのに大人の感覚でサッカーをしていました。普通、大人のコーチに『走れ』と言われたら、子供たちは怒られたくないからどんな場面でも一生懸命走るんですが、彼は違った。ゲームのなかで、なにが必要でなにが無駄なのかわかっている。経験を積んで初めて
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