何を思ったか、ロンはウサギのぬいぐるみをぽーんと放り投げた。 哀れなウサギは、クマの目の前に落ちた。ヒグマは、最初こそ慎重に匂いを嗅いでいたが、 やがてがぶりと噛みつき、何の罪もないウサギを惨殺にかかった。あたりに飛び散る、白い綿…。 もし、もしこれが、ぬいぐるみでなかったら。そんな恐ろしい考えが頭をよぎって、冬一郎はきつく抱きしめたロンの顔を手で覆い、思わず後ずさった。 「ミカさん、その…ご…ごめんなさ…」 「落ち着け、冬一郎」 殺気立った低い声でミカエルがささやいた。 「熊から目を逸らすんじゃねえぜ。そのまま、静かに歩いて立ち去るんだ。走って逃げるから襲われるんだぜ…!」 どうやら、彼の中で何かのスイッチが入ったらしい。故郷スウェーデンの森に迷い込んだ精神状態となり、のちに冬一郎はこれを、ミカエルの「サバイバルモード」と呼ぶようになる。 クマ編はおしまいだよ!次はサバイバルモードが続く