税に関する議論を眺めていていつも思うのは、どの論者も税の問題にとって根幹であるはずの負担と分配の「公平性」の問題に、あまりに無関心・無頓着であることである*1。というより、論者がそれぞれ自明としている「公平性」に無自覚に寄りかかっているため、議論が常に一方通行になっている印象がある。一方通行の議論を許容してしまうと、現状において権力をもつ多数派の意見が自動的に勝利し、権力をもたない少数派の意見が論争以前に敗北しまうことになってしまう。税負担の「公平性」そのものに関する議論がもっと深められなければならない。 何が「公平」な負担であるかというのは極めて難しく、その国の政治文化によって異なるし、その人の価値観によっても大きな違いがある。たとえば、消費税と累進所得税とのいずれが公平であるのかは、容易に決着のつかない問題である。テレビを見ると、増税の手段として消費税が「公平」であることはほとんど自明