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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (39)

  • 水樹奈々に寝かしつけてもらう『おやすみ、ロジャー』

    ここ数年、なかなか寝付けなかったのが、一瞬で眠れた。 もちろん、あれこれ試してきた。昼間は日光を浴びるとか、寝る前はブルーライト避けるとか。しかし、横になって目を閉じても、雑事や悩みが頭をめぐり、なかなか眠りに入れない。体が眠りたいのに、頭がそうさせてくれぬ。悶々してるうちに朝が来たことも幾度かある。 それが、一発で眠れた。 だがこの眠り、まったく理解を超えてた……ありのまま、起こったことを話そう。「私は、水樹奈々の朗読を聞き始めたと思ったら、いつのまにか朝になってた」。何を言っているのか、分からないと思うが、自分も、何されたのか分からない。快眠CDだとかチャチなものじゃなく、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった。 それが『おやすみ、ロジャー 朗読CD』である。もとは「魔法のぐっすり絵」と呼ばれており、小さな子どもの寝かしつけのために研究された絵だ。喚起されるイメージや、音節のリズムを考

    水樹奈々に寝かしつけてもらう『おやすみ、ロジャー』
    jumitaka
    jumitaka 2016/10/23
    全年齢の同人音声で快眠できる人なので、水樹奈々さんとか聞いて寝たら永眠しそう
  • 金融再編残酷物語「システム統合の正攻法」

    Day2の大営発表。 Day2とは"Project Day 2"のことで、東京三菱とUFJの勘定系を統合させた、史上最大のプロジェクトだ。書は、日経コンピュータの記事を元に、Day2のケーススタディとして編纂されている。プロジェクトマネジメントとシステム統合の文字通り「生きた教科書」といえる。ただし鵜呑むのは禁止な、経営層の大営発表を元に作られているのだから。「涙の数だけ強く慣れるよ」(誤字ではない)とつぶやきながら読むべし。 Day2がいかにデカいかは、次の数字が物語る。 11万人月 2500億円 開発に3年 6000人の技術者 8万人のシステム利用者 比較のために添えておくと、みずほ銀行のシステム統合(2004.12完了)は9万人月、郵政民営・分社化に伴うシステム対応(2007.10完了)は、4万3000人月になる。Day2がいかにケタ違いであるかがよく分かる。これに加え、チーム

    金融再編残酷物語「システム統合の正攻法」
    jumitaka
    jumitaka 2016/07/07
  • 女は尻だ。異論は認めない『FRaU 2014/3』

    女は尻だ。異論は認めない。 女は尻だ。異論は認めない。 すべては尻であり、尻にある。美しさ、強さ、優しさを兼ね備えた、あらゆる魅力と質の表象であり、かつ全人類の故郷であり桃源郷であり、世界でいちばん穏やかで不滅で争いのない場所である。君に、おっぱい山頂への征服欲があることは理解できる。だが、そこは四足から二足へ移行する際、成熟のバロメーターとして採用された代替品だ。山頂を踏破したら清水で潤すべく、谷へ降り蟻の門渡りを目指せ。お尻を賛美することは、おっぱいを否定することにならない(逆もまた然り)。 この真理に全力を注いでいるのが、『FRaU』3月号だ。「おしりは女のバロメーター!おしりが上がると人生が上がる!」とばかりに、みんなの大好きな魅惑のお尻たちをビシバシ紹介する。尻爛漫の春なのだ。それだけでなく、お尻はダイエットの勘所であり、美尻を目指すトレーニングがキレイにも痩せにもつながること

    女は尻だ。異論は認めない『FRaU 2014/3』
    jumitaka
    jumitaka 2014/08/02
  • 「隣の家の少女」観た、今は後悔している

    このエントリは、「どくいり、きけん」。 虐待・監禁・陵辱を扱った「隣の家の少女」を観てきた。テーマは、痛みだ。 平日のレイトショーなので閑散してると思いきや、満席状態なのでビビる。野郎ばかりと思いきや、女性、しかもかなり若い女が結構いる。けっこう。ほぼ全員、「独り」で来ているようで、カップルが一組、男同士が数組。開始前の行列で誰も話さない。こわい。恐いもの見たさなのかねぇ、みんな変態だなー、と腹で笑っていたが、後に大まちがいだったことを思い知る。 映画の内容は、小説を忠実に映像化しましたという感じ。小道具を使った伏線や、火のついたタバコをペニスのメタファー(後に文字どおりペニス)として扱う技巧はうまいなーと思う。憧れの女の子が監禁虐待されているにもかかわらず、何もできない主人公の歯がゆさというか無能感もこんなもんだろ。ただしラストの英雄贖罪行為は勇み足。 ただ、内容はキツいです。原作で慣ら

    「隣の家の少女」観た、今は後悔している
    jumitaka
    jumitaka 2013/10/23
  • パラダイムシフトの情報史 『情報技術の人類史』

    美は眺める者の眼中にあり、情報は受け手の脳内にある。 一筋の煙や電気インパルスに込められた「情報」を「意味」に転じるには、人の介在を必要とする。古代、近代、現代の情報と通信の技術を経巡ることで、人が「意味」をどうやって進化させてきたかが分かる。伝えたい内容・残したい質である、意味を見える化したものこそが、情報なのだ。 アフリカのトーキング・ドラムに始まり、文字の発明、辞書製作、蒸気計算機や通信技術の開発、遺伝子解読や量子力学と情報理論の結合まで、「情報」を操る数多くのエピソードを縦横無尽に紹介する。膨大な量と深さに溺れそうになるが、「新たな情報技術に接したとき、人はどう変化したか」という軸で読むと、人間の思考の変質の歴史になる。これは、おもしろい。 たとえば電信は、「天気の概念」「時間の概念」を一変させた。電信のおかげで遠隔地の状況が分かるようになったからだ。人々は天気のことを、土地ごと

    パラダイムシフトの情報史 『情報技術の人類史』
    jumitaka
    jumitaka 2013/05/05
  • 『時間ループ物語論』はスゴ本

    古今東西の時間ループ物語を題材として、現代日を生きる人々が抱く価値観、人生観へ肉薄する佳作。十年前のテキストサイトでよく見かけたオタ的論述スタイルが、暑苦しく膨大に展開されており、懐かしくも愉快な読書と相成った。 うる星やつら『ビューティフルドリーマー』や、涼宮ハルヒ『エンドレス・エイト』といったアニメから、ゲーテ『ファウスト』、落語『芝浜』、漱石『それから』、果ては浦島太郎伝説を俎上に乗せ、定義、掘り下げ、類型化、普遍化し、物語の根っこである「願望充足」「カタルシス」にまで至る。 アニメ、映画小説、古典、神話……膨大な作品を次々と挙げ、脱線に次ぐ脱線を繰り返しながら語られてゆく、著者独特の「読み」の過程や考察がめっぽう面白い。リアルタイムでエヴァ論を読み重ねてきた人にとって、「時間ループ」はたまらない材になるだろう。 たとえば、若返り譚も含めると、ループ物語は古代から前史があったと

    『時間ループ物語論』はスゴ本
    jumitaka
    jumitaka 2013/01/23
  • 他人と比較するバカ親にならないために

    比べるのは、「昨日のわが子」。これを忘れないために。 「Appleになれない日のメーカーはダメ」とか、「北欧並の社会保障がない日はクソ」といった主張を耳にするたび、苦笑しながら自戒する。同じ愚を犯していないだろうかと自問する。近所で/クラスで/学年で、一番デキる子と比べ、「○○ちゃんを見習って…」と子どもを責める馬鹿親にならないために。 転職の自由はアメリカと比較され、 仕事を休む自由はドイツと比較される。 社会保障の充実はスウェーデンと比較され、 バカンスの充実(と長さ)はフランスと比較される。 国内総生産は中国と比較され、 国民総幸福はブータンと比較される。 イイとこと見たらアラも目立つ。 にもかかわらず、己が主張をオっ立てて、 「○○と比べて日はダメだ」を連呼する。 日のスーパーのトマトは、「桃太郎」と「プチトマト」しかないという。イタリアは何十種類もトマトがある。だから日

    他人と比較するバカ親にならないために
    jumitaka
    jumitaka 2012/08/28
  • 魔法少女のガチバトル「魔法少女育成計画」

    どうしたらプリキュアになれるか? ずっとわたしを悩ませて続けてきた。ずば抜けた身体能力を持ち、格闘戦に長け、必殺の癒し砲を放つ伝説の戦士。ご町内の困った人を助け、ご近所の平和を守る、魔法少女に、俺はなる!決心してから幾年月たったことか。 ところが、娘があっさり答えを出す。しれっと「こないだの映画で一緒に観たじゃん」とまで言う。プリキュアオールスターズの名台詞のこれだろう───「誰かを守りたい、その心が女の子を強くする」。そして、あなたがプリキュアになるための5つの方法を見ると、わたしだって可能性はある。 だが問題は残る。プリキュアになって、俺は何をするのか? 魔法少女になることで、いや、その契約をすることが、いったいわたしの生活が、運命が、どう変わってゆくのか? 答えは書にある。殺し合う魔法少女16人のどこかに、わたしがいる。試したいのだ、己が力を。超人的な力を手にしたら、やってみたくな

    魔法少女のガチバトル「魔法少女育成計画」
    jumitaka
    jumitaka 2012/08/28
  • 紀伊國屋は売切れ御免、amazonは残り僅か「なぜ私だけが苦しむのか」

    オススメをプレゼンし、読みたくなった一冊を決める「ビブリオバトル」に行ってきた。 わたしが推したのは「なぜ私だけが苦しむのか」。付せんと傍線と書き込みで一杯の、この一冊は、死ぬまで手放すことはない。これは、「人生の保険」だ。を読む元気があるうちに読んでおき、いざ不幸の一撃に見舞われたときに思い出すなのだ。「買うべし(命令形)」と猛プッシュしたお陰で、ビブリオバトル終了直後、すぐに売り切れになった。 これ、ロングセラーなのに、置いてる屋や図書館が少ない。Amazonでもよく品切れになる(現在11点の在庫)。このが必要になるときは、人生のうちで必ずある。そのときは、すぐに読みたいはず。そして、「そのとき」に手に入るかどうか、分からないから。ここらは自動車保険や生命保険と同じ。「そのとき」になって直ぐに連絡できるよう、保険会社の連絡先は常に携帯している。同様に、イザというとき、この一

    紀伊國屋は売切れ御免、amazonは残り僅か「なぜ私だけが苦しむのか」
    jumitaka
    jumitaka 2011/10/12
  • この「本のオフ会」がスゴい

    ネットの外に出る試み。と人と出会うため、ブクブク交換に行ってきた。 「ブクブク交換」とは、BookとBookの交換のこと。物々交換を洒落ており、のプレゼン→交換による交流を楽しむ会だそうな。あらかじめテーマを決めてを持ち寄り、そのについてアツく語るとこなんて、「スゴオフ」と一緒なので嬉しい。 違うのは、「と名刺の交換」なところ。スゴオフだと「ブックシャッフル」なので、どのがアタるかは運次第になるし、プレゼンのためだけの「見せ(放流不可)」もアリ。また、ブクブク交換ではだけでなく名刺の交換もするため、人の出会いも加速しやすいメリットがある。 よりも、人に会うため、行ってみる。わたしが持って行ったのは、ジュースキント「香水」とサン=テグジュペリ「人間の土地」。で、「交換」してきたのは、ジェロームの「ボートの三人男」。英国的ウィットと諧謔的ユーモアを絵に描いたような傑作と誉

    この「本のオフ会」がスゴい
    jumitaka
    jumitaka 2011/09/29
  • 宮崎駿ぜんぶ入り「シュナの旅」

    「風の谷のナウシカ」を読んだ。 ナウシカ読んでないよと告白すると、かなり驚かれる。むかし昔、映画を観た頃、同じとこ(トルメキア撤兵)まで読んだのは記憶している。「映画は"序盤"にすぎないよ」とか「あの後のナウシカが辛いんだよ」とかオフ会で刺激されてイッキ読み。虫と人との共存という映画版のテーマが、相容れない異文化の融和にシフトしてゆく様子はお見事だが、環境問題に絡めた前者の方が性に合うなぁ…… 初読が311より後だったので、(わたしの)世界の見え方がまるで変わってしまっている。だから、少女が背負うには世界は重過ぎるし、広すぎるし、命に満ち溢れすぎている。メシアを崇める方角へ押しやってしまうという後知恵もアリだが、もしそうした"演出"が加わると、宗教臭さが鼻につくだろう───なんてつぶやいていると、ナウシカの原点という触れ込みで「シュナの旅」を紹介される(ゆりぽありがとう)。 「シュナの旅」

    宮崎駿ぜんぶ入り「シュナの旅」
    jumitaka
    jumitaka 2011/04/24
  • 本屋オフ@丸善ジュンク堂

    ガチでオススメを紹介しあい、ピンときたら容赦なく購入する。 屋は普通、マタギのように孤独に巡回するものだと思い込んでいた。が、グループでハンティングすると、さらに狩場が広がることが分かった。同時に、見過ごしていたガチ(ガチで読んどくべき)がざくざく狩り出されるのが嬉しい。優れたマタギが、チームとなって行動すると、それぞれの視野が拡大し、さらに遠くまで見通せるようになるのだ。 今回の狩場は、丸善ジュンク堂@渋谷。実は行くのは初めてだが、まさに「丸善」たす「ジュンク堂」だった。「丸善」らしさは文具コーナーが併設してるところ。「ジュンク堂」らしさは森のような棚の並び。オススメ棚は、それぞれの選書担当のを並べただけで、どのレコメンドがどちらの書店かをあてっこできるぐらい特徴的。第一印象は単に合体しただけのようだが、通うとシナジー効果が見えてくるのだろうか。 そこで、屋オフで重要なことに気

    本屋オフ@丸善ジュンク堂
    jumitaka
    jumitaka 2011/01/30
  • さわれる数学「ベッドルームで群論を」

    もちろん数学は役に立つ。男女和合でイきそうなとき、素数を数えて落ち着くのだ。とある神父に教わった技だが、わたしに勇気を与えてくれる。 「ベッドルームで群論を」だから、艶っぽい話を期待したらご勘弁。これは、眠れぬ夜に羊を数える代わりに、マットレスをひっくり返す黄金律を探すネタなのだから。命題はこうだ「マットレスを一定の操作でひっくり返し、マットレスがとりうるすべての配置を順繰りに実現する方法はあるのか?」。長いこと使っているとヘタってくるので、定期的にひっくり返す必要があるのだ。マットレスはごく普通のもので、長方形の、ちょうど単行のような形だ。書をマットレスに見立てて、タテに回したり、ヨコにひっくり返したのは、わたしだけではないだろう。 著者はマットレスを飛行機に見立てて、ピッチ、ロール、ヨーの回転を定義づけている。左右を軸とした回転(pitch)、前後を軸とした回転(roll)、上下を

    さわれる数学「ベッドルームで群論を」
    jumitaka
    jumitaka 2011/01/29
  • 「コミPo」で描いてみた

    マンガが「ポッと描ける」から「コミPo」って、どんだけ安直なネーミングやねん… ……と始めたところ、すげぇすげぇ、笑ってしまうほど簡単にできた。絵を描くは「ドラッグ・ドロップ」で、ポージングや表情などの細かいとこは「メニューから選択」でお終い。フキダシのせりふをヒネるところが一番苦労したりする。どんだけ直感的かというと、わたしの娘(園児)がサクサク作れるくらい。ちなみに、上のマンガは15分ででけた。マンガを「描く」ためのドローツールというよりも、マンガを「創る」ためのオーガナイザーだ。キャラを置いた後、ポーズやカメラアングルを試行錯誤できるのが、「マンガを描く」のと決定的に違うところ。この試行錯誤が楽しくて仕方ない。ネームさえ決まれば、あとは流れ作業、次のやつは15分で完成。 簡単にできるようになったからこそ気づいたのが、ネームの難しさ。描くのは単純作業なのよ。けれども、「何を」「どう」描

    「コミPo」で描いてみた
    jumitaka
    jumitaka 2011/01/18
  • 少女と記憶とアイデンティティ・クライシス「少年は荒野をめざす」

    あらゆる少女マニアにオススメ。 いわゆる澁澤的「少女マニア」を脱し、今度は父としての立場から娘を育てている。ピンで止めてガラスケースに陳列するのではなく、生きて動いて大きくなる存在だ。もう幼児ではない娘を見ていると、記憶の彼方の少女を探すのか、それとも未だ見ぬ「少女」をシミュレートすべきか、分からなくなる。 そういうわたしにとって、「少女とはどんな存在か」を見える物語で示してくれる吉野朔実はありがたい。これが野郎になると、耽美とか処女性とか象徴的な語りに陥ってしまう。少女とは「女の子ども」や「処女の娘」で囲い込める存在ではない。 もっと端的に言うなら、「少女」とは欠けた存在だ。その欠片は、世間体(親も含む)を繕うための外聞だったり、自身を安定し充足させるための何か―――才能の発露や生活基盤、"わたし"という確固たる存在そのもの―――が相当する。だから「少女」は生き難い。自分とは何か?をつか

    少女と記憶とアイデンティティ・クライシス「少年は荒野をめざす」
    jumitaka
    jumitaka 2011/01/16
  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 子どもが「数学なんて役に立たない」なんて言いだしたら渡す「数学で犯罪を解決する」

    天才数学者が犯罪者を追い詰める。 アメリカのドラマ「NUMB3RS」の話だけれど、実際の事件をベースにしている。科学捜査官ならぬ数学捜査官。そのエピソードを糸口にして、元ネタとなっている様々な数学概念を解説するのが書。サスペンスのドキドキ感と数学のエウレカ!を楽しみながら読む。 まず、ロサンゼルスの連続殺人鬼。若い女を次々と強姦殺人した現場が、街路図に×印で記されている。捜査は行き詰っており、手がかりはない。次はどこで、誰なのか――? この事件を解決する数学の発想がスゴい。わたしなら、「×群の真ん中あたり」しか思いつかないが、この天才数学者は試行錯誤の結果、次の数式を書く。 もちろんわたしにゃチンプンカンプンだった――が、書ではその肝を解説してくれるので安心して(そしてわたしに訊かないように!)。 これは、連続殺人犯の自宅を絞り込むための式だそうな。犯人は尻尾をつかませないよう、ランダ

    わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 子どもが「数学なんて役に立たない」なんて言いだしたら渡す「数学で犯罪を解決する」
  • 処女膜ばかり気にしててサーセン「太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは」

    助平なんでハァハァしながら読んだぞ。テーマはこれっぽっちもハァハァするもんじゃないんだが、好きに読ませてもらうのは読者の特権。 フランス女性小説家を代表する、デュラスとサガンの3作が入っている。どれも、美処女が恋をしてセックスに狂う話―― だけではなく、もっと重いテーマが横たわっている。 太平洋の防波堤(デュラス) 愛人 ラマン(デュラス) 悲しみよ こんにちは(サガン) 世に出たのは50年ほど前、だから「まだ子どもみたいな少女がセックスの快楽を貪る」描写はかなりセンセーショナルだったかと。そして、あんだけヤってて、これっぽっちも妊娠するそぶりすらないのも、当時の読者のアタマをアツくしたんじゃぁないかと。小説に教訓めいたものを求める輩は、「ひと夏の恋→セックル→予期せぬ妊娠」を弁証法のように振りかざすから。 ■ マルグリット・デュラス 処女を失うことは、それぞれの小説で象徴的に扱われている

    処女膜ばかり気にしててサーセン「太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは」
  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる : 「ブラッドハーレーの馬車」に絶句する

    「赤毛のアン」を陵辱する、心ゆさぶるストーリー。強く強く、めまいがするほど。 はじまりは、孤児院。身寄りのない少女たちの憧れは、ブラッドハーレー歌劇団。1年に1度、容姿に恵まれたものが選ばれ、資産家・ブラッドハーレー家の養女として迎えられる。貴族としての生活や、歌劇団で華々しく活躍することを夢見る少女たち。 気で読む気なら、予備知識はこのくらいで。ただし、「劇薬注意」とだけ添えておく。帯の説明は地雷なので、外しておこう(わたしもそうした)。沙村広明版「キャンディ・キャンディ」のつもりで扉を開いた。おかげで、こうかはばつぐんだ。 第一章を読む。 みるみる顔色が変わっていくのが、自分でも分かる。心配した嫁さんがわたしの名前を呼んでいる。「ちょっとうるさい!黙ってて!」ふだんなら絶対に言わないような言葉を、強い口調で伝える。嫁さんも気色ばんでるみたいだが、かまやしない。 ぜんぶ読む。自分を取り

  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 背徳の愉しみと目の悦びの5冊「澁澤龍彦 : ホラー・ドラコニア少女小説」

    5冊イッキ読み、一気レビュー。 ■1 「ジェローム神父」 マルキ・ド・サド×澁澤龍彦×会田誠 まず「ジェローム神父」。澁澤龍彦=マルキ・ド・サドと、幻想画家・会田誠の恐ろしいコラボレーション。ふつうの人は避けたい挿絵とストーリー。 たとえば表紙。ポニーテールの少女(全裸)が、アッケラカンとした笑顔で見上げている。ただし両手足は切断されており、ぐるぐる包帯からにじむ血肉が生々しい。あるいは挿絵。少女の腹を指で押すと、割れ目からイクラがぽろぽろと出てくる「とれたてイクラ丼」は目を見張る。 もちろんサド・テイストも凄まじい。冒頭、恋人どうしの若い男女を人気のないところへ連れ出し、まず男を射殺。そして女を姦するのだが、ただじゃすまないのがサド節。小枝やトゲのある蔓で女の柔らかい場所を刺したり痛めつける。男の死体を切り裂いて、そこから心臓を抜き取り、娘の顔を汚す。あまつさえ心臓の幾片かを無理やり娘の

  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: この本がスゴい2007

    今年「も」沢山のスゴと会えたのは、すべてあなたのおかげ。 ありがとうございます、大感謝しています。 たとえば、「このよかった」とblogに書く すると、「ソレが良いなら、じゃぁ○○なんて、どう?」と教えてくれる じゃぁ、○○を読む なんと、す、スゲぇッ(絶叫) いそいで、「○○はスゴ」とblogに書く ふたたび、「ソレが良いなら△△どうよ?」 このフィードバックループのおかげで、普段は読まないエリアまで手が伸びる伸びる。 もちろん嗜好の違いによる「ズレ」はあれど、それは単に「面白がって読めなかった」にすぎない。むしろ、そいつを味わうためのキャパ不足を痛感しただけでもめっけもの。そのを面白がって読むことはスキルの一つ。 気の毒なことに、「トシとると面白いがなくなる」とグチるオッサンがいる。知見の狭さや思考の固さよりも、無自覚な様子が傍目に痛い。ああはなりたくないものだ。「ボクの範囲

    わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: この本がスゴい2007