「水と安全はタダ」な日本 2020年夏季五輪の開催都市に東京が選ばれたとき、多くの海外メディアは「不確実性の時代の安全と治安の良さ」(「ウォールストリート・ジャーナル」2013年9月7日付)が決め手になったと報じた。 東日本大震災の際には被災地で略奪も起きず、秩序が保たれていたという日本人の美質も、評価の背景にあった。宮城県警の発表によれば、震災から2週間ほどの間に宮城県内で290件の窃盗被害があり、被害総額は1億円に上っていたから、実際は“火事場泥棒”がなかったわけではない。しかし、気仙沼信用金庫の壊れた金庫から4000万円が持ち去られた一件を除けば、その多くは空き店舗から生活物資を盗んだり、車からガソリンを抜き取ったりする、生き抜くための必要に迫られた犯罪だ。2005年にハリケーン・カトリーナが米ニューオーリンズを襲ったときには、警官まで略奪に加担するという無法地帯が現出した。 かつて