「幻の古典ポルノ」は本当に荷風の作品なのだろうか? ずっとむかし、荷風の作品と伝えられる小説『四畳半襖の下張り』が「わいせつ文書」として、ある出版社が摘発されたことがある。その事件をまだ覚えておられる方もいることと思う。文学作品(芸術?)かポルノか、後日興味をもち伏字の目立つ本を購入したことがある。しばらく経って、さて読んでみようか、と思っては見たものの、探しても見当たらなかったので未だに読んでいない。 で、数日前のことだ。毎朝、荷風の日記(岩波全集版)を読んでいるのだけれど、次のようなことが書かれていた。戦後、千葉県市川に転居した頃(荷風六十九歳)に書かれた日記には…… 昭和二十二年一月十二日 「……夜、扶桑氏来り猪場毅 余が往年戯にものせし春本襖の下張りを印刷しつゝある由を告ぐ。この事もし露見せんか、筆禍たちまち身に及ふべし憂ふべきなり」 また別の日には、 一月十五日 「…正午、春街氏