ブックマーク / sasurai1.hatenablog.com (37)

  • 今さらだけど『四畳半襖の下張り』は永井荷風の作品か? - 花と木と山が好き

    「幻の古典ポルノ」は当に荷風の作品なのだろうか? ずっとむかし、荷風の作品と伝えられる小説『四畳半襖の下張り』が「わいせつ文書」として、ある出版社が摘発されたことがある。その事件をまだ覚えておられる方もいることと思う。文学作品(芸術?)かポルノか、後日興味をもち伏字の目立つを購入したことがある。しばらく経って、さて読んでみようか、と思っては見たものの、探しても見当たらなかったので未だに読んでいない。 で、数日前のことだ。毎朝、荷風の日記(岩波全集版)を読んでいるのだけれど、次のようなことが書かれていた。戦後、千葉県市川に転居した頃(荷風六十九歳)に書かれた日記には…… 昭和二十二年一月十二日 「……夜、扶桑氏来り猪場毅 余が往年戯にものせし春襖の下張りを印刷しつゝある由を告ぐ。この事もし露見せんか、筆禍たちまち身に及ふべし憂ふべきなり」 また別の日には、 一月十五日 「…正午、春街氏

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    k10no3 2024/08/08
  • 京で食い詰めたへぼ写真家の竹斎 - 愛宕参りの帰りに鮎茶屋へ寄る ー そこでの顛末とは? - 花と木と山が好き

    鮎茶屋 京の写真家として、一向に芽の出ない竹斎。道を尋ねゆくほどに鳥居に出でる。ここはいたって賑やかにて、見世物小屋、大道芸人、読売り、講釈師などありて、そして葭簀(よしず)張りの水茶屋あり。 愛宕神社一の鳥居 愛宕神社へかかる道 一の鳥居前にいたり、志んこ団子、田楽を売る茶屋二軒あり。赤前垂れの女、軒に出て… 【女】「あなた お休みかいな。志んこ団子あがらんかいな。田楽あがらんかいな。 茶あがってお出んかいな。」 【竹斎】「もしもし、わしら愛宕さまへ参詣して帰りに、おめえの所で休みやしょうから、この でけえ三脚をここに置いてくんなせい。」 【茶屋】「はいはい、お預かり申しましょわいな。お早ういてお出なされ。」 【竹斎】「ほなら、おたのみ申しやす。」 と、竹斎 大きな三脚を茶屋の入口に立てかけて置き、ゆき過ぎて… 【竹斎】「やれやれ重荷おろしたわい。写真機だけでも重たいのに。どうだニラミ

    京で食い詰めたへぼ写真家の竹斎 - 愛宕参りの帰りに鮎茶屋へ寄る ー そこでの顛末とは? - 花と木と山が好き
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    k10no3 2024/03/14
  • 弥次さん北さん - 京の古着屋に出まかせを語り、安値で着物を買うの巻 - 花と木と山が好き

    【北八】「思えば…つまらねエことになった。どうぞ古着屋でも見つけたら、どんなでも綿入れが一枚欲しいが、弥次さん、いい知恵はねエかの?」 【弥次】「なに、買わずとも良いにしたがいい。江戸っ子の抜け参りに、裸になって帰(けえる)るは、当たり前ェだは…。」 ※抜け参りとはー家族に黙ってお伊勢参りすること。むかしお伊勢さんの近くには、男の遊ぶ所があったので、それで裸になってけえるって言うのかもネ。 【北八】「それだとって寒くてならねェ。」 【弥次】「そんなら幸いここに湯屋がある。なんと ちょっくり温まっていかねェか。」 【北八】「ほんに こいつは奇妙きみょう。弥次さんお先へ…ありがてェ。」 と、一目散にある格子造りの家の暖簾をくぐりて、すっと入り、駆け上がって、裸になろうとすれば、そこの亭主… 【亭主】「もしもし こなたさん誰じゃいな? 何さんすのじゃ!?」 と、咎められて、北八あたりを見廻し見る

    弥次さん北さん - 京の古着屋に出まかせを語り、安値で着物を買うの巻 - 花と木と山が好き
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    k10no3 2023/12/29
  • 弥次郎兵衛喜多八 五条新地で裸にされ古着屋を探すの巻(弥次喜多道中の作者が都の名物と京ことばに詳しいのは何故だろう) - 花と木と山が好き

    花の春、紅葉の秋は、東西南北に名だたる勝景の地ありて、「賀茂川」 銘酒の樽とともに、人の心を奪い、京女、商人のよき衣 着たるは、他国に異にして、京の着倒れの名は、ますます西陣の織元より出、染め色の花やぎたるは、堀川の水に清く、釜もとの白粉、川端の「ふしのこ」(お歯黒)は、ゆきをあざむき、御影堂の扇、伏見のうちわに、風匂う革堂前の粽、円山かるやき、大仏、醍醐のウド芽、鞍馬の木芽煮は、『庭訓往来』にいちじるく、東寺の蕪、壬生の菜は、名物選にはなたかし。 名産品の数多ある都に、たまたま入り込んだ弥次郎兵衛-喜多八。京の遊所地-五条新地で一杯機嫌に、早のみ込みして丸裸となりたる、喜多八(着た八)の名にも似ず、同行の弥次郎兵衛が木綿合羽を、借り着せしほどの仕合なれば、かかる洛陽の地もおもしからず、うかうかと、五条新地もどりの朝風、身にしみわたり、五条の橋に差し掛かりたるに、此処は いにしえ、弁慶の

    弥次郎兵衛喜多八 五条新地で裸にされ古着屋を探すの巻(弥次喜多道中の作者が都の名物と京ことばに詳しいのは何故だろう) - 花と木と山が好き
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    k10no3 2023/12/13
  • 江戸っ子の湯治と江戸っ子の習性を『東海道中膝栗毛』から考察する? - 花と木と山が好き

    江戸ッ子の湯治は夢でしかない? 半年ほど前に「江戸ッ子の湯治」という文章を読んだ。作者は江戸の文化や風俗にくわしい三田村鳶魚(えんぎょ)氏である。江戸に詳しい作家先生方には、他には穎原退蔵氏、森銑三氏、饗庭篁村氏、淡島寒月氏、そしてわたしの私淑する幸田露伴氏などがいるが、三田村氏ほど庶民の生活を調べて、書いて、後世に残している方を知らない。 で、今日お話しするのは、三田村氏の受売りであることをお断わりしておきます。 江戸時代、湯治の出来る者は相当な費用がかかるので、庶民には高嶺の花。長屋に住む庶民には、湯治費用などどこにもありません。なんせその日暮らしなんですから。ですから江戸ッ子は親も子も孫も湯治には行けません。 わたしの子どもの頃は、親と一緒に山奥の湯治場に米、野菜、缶詰などを背負い(釜、器、急須などは宿から借りた)、数日間とか行ったものですが、江戸ッ子は、ハア? 湯治って何? なん

    江戸っ子の湯治と江戸っ子の習性を『東海道中膝栗毛』から考察する? - 花と木と山が好き
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    k10no3 2023/09/03
  • 『東海道中膝栗毛』 - 京名物 辻子の陰で大根と小便のとっかえっこ? (今回も弥次郎兵衛北八は下品ですw) - 花と木と山が好き

    前回のつづき [ かくてその日も、はや七ッ(午後四時)頃とおぼしければ、いそぎ三条に宿をとらんと、道をはやめ行く。すると向うに小便タゴ(桶)と大根を荷いたる男が…… ] 【肥取りの男】「大根小便しょっしょっ。クソはいらん…。」と節をつけて男が歌って歩いて来る。 【北八】「ハハハハハ 唐茄子が笛を吹いた見世物は見たが、大根の小便するのは、ついど見たことがねェ。」 【弥次】「※あれがかの、京名物の大根と小便と、とっけえにするのだろうよ。」 ※さても小便を寵愛するは京の百姓で、北は八瀬、大原、南は高瀬舟で伏見方面へ舟で持ちかえっていたようだ。十返舎がかかる風習を誇張して書いたのを当時の読者は喜んだのであろう。 【肥取りの男】「大きっな大根と、小便しょっしょっ。」 [ と、歌って行くこなたより、お中間(公家や武家屋敷の下級召使)らしき、しみたれの男が二人 ] 【中間ちゅうげんの男二人】「コリャ コ

    『東海道中膝栗毛』 - 京名物 辻子の陰で大根と小便のとっかえっこ? (今回も弥次郎兵衛北八は下品ですw) - 花と木と山が好き
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    k10no3 2023/08/27
  • 永井荷風にもあった切ない青春の一ページと…悲惨な最期 - 花と木と山が好き

    鳴しきる虫の聲あまりに急なれば、 何とて鳴くや 庭のこうろぎ夜もすがら、 雨ふりそへば猶更に あかつきかけて鳴きしきる。 何とて鳴くや こうろぎと問へど答へず、 夜のみならで、 秋ふけゆけば昼も鳴く。 庭のみならで臺どころ、 湯どのすみにも来ては鳴く。 思い出しぬ。 わかき時、 われに寄り添ひ わが恋人はただ泣きぬ。 慰め問へば猶さらに むせびむせびて唯泣きぬ。 「何とて鳴くや 庭のこうろぎ。 何とて泣くや わが恋びと。」 たちまちにして秋は盡きけり。 冬は行きけり。月日は去りぬ。 かくの如くにして青春は去りぬ。 とこしなへに去りぬ。 「何とて鳴くや 庭のこうろぎ。 何とて泣くや わが恋びと。」 われは今ただひとり泣く。 こうろぎは死し 木がらしは絶ゑ ともし火は消えたり。 冬の夜すがら われは唯泣く一人泣く。 荷風といえば「日記」から推測するに、小説の材料を求めて夜な夜な玉の井や浅草を徘

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    k10no3 2023/08/22
  • 『東海道中膝栗毛』 ー 清水の舞台からとんだ話と、坊さんにとんだ目に遭った話 - 花と木と山が好き

    [ 弥次郎北八、三十三間堂を北へさしてゆくに、往来ことに賑わしく、げにも都の風俗は、男女ともにどことなく、柔和温順にして馬子荷歩持(まごにかちもち)までも、洗濯布子の糊こわきを、折り目高にきなして、"あのおしやんすことわいな"(何をおっしゃいますやら)と、なまめきたるもおかしく、二人は興に乗じ、目に見るものごとに珍しと、たどりゆくうち、はやくも清水坂にいたる。 両側の茶屋 軒ごとに扇ぎたつる、田楽の団扇の音かまびすきまで、呼びたつる声ごえ…] 【茶屋の女将】「モシナお入りなされ。茶ちゃあがってお出んかいな。…名物なんばうどん、あがらんかいな。…お休みなされ お休みなされ。」 【弥次】「北八、何ぞってもいいが、もっと先へ行ってからのことにしよう…。」 [ と、ほどなく清水寺にいたり、境内をめぐり、音羽の滝を見る。堂は十一面千手観世音なり。むかし沙門延鎮が夢中にえたる霊像にして、坂の上田村

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    k10no3 2023/08/08
  • 「東海道中膝栗毛」 ー 豊太閤の造営した方広寺大仏殿で弥次郎 柱の穴くぐりでトンだ目に遭うの巻 - 花と木と山が好き

    京の大仏殿の柱の穴くぐりの大きさは、大仏の鼻の穴とおんなじ? [ 奈良の東大寺大仏にならい、豊臣秀吉公が造営した方広寺大仏殿、尊は廬舎那仏(るしゃなぶつ)の坐像身の丈六丈三尺、堂は西向きにして東西二十七間、南北は四十五間あり。弥次郎北八ここに法施(ほっせ)し奉りて… ] 写真は東大寺大仏殿 【弥次】「なんと話に聞いたよりか、ごうてきなもんじゃァねえか。こうしてござる手のひらへ、畳が八畳しかるげな。」 【北八】「タヌキの金○と同じことだな。」 【弥次】「もってえねえことを言う。そしてあの鼻の穴からは、人が傘をさして出らるると…。」 【北八】「そりゃアまだしも、人がさして出るからいいが、俺らが方のぼうだら(酔った)北八が鼻の穴からは、瘡がひとりでに吹き出したわ(梅毒が鼻に出た)。」 【弥次】「ばかぁ言うな。…大仏様の後ろにまわってみよう。おや、背中に窓があいてらァ。」 【北八】「あれは大方汐

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    k10no3 2023/07/23
  • 「東海道中膝栗毛」 ー 大坂へ向ったはずが、どういう訳か伏見港に逆戻りし 伏見稲荷でウバ甘酒を飲むの巻 - 花と木と山が好き

    前回のストーリーの最後は、 [ かくて船は、枚方を過ぎたころ、雨催いの空、にわかに暗くなり雨が降り出した。見る見る間に大雨となり、苫も役に立たず、着物を濡らす。乗合船は上を下へと大騒ぎ。大雨と強風にたたられ木の葉のように淀川の大波に翻弄される船は舵も自由にならず、やがて船は激流の渦に吞み込まれるのだった。はたして弥次さん北さんの運命や如何に ] 【弥次さん北さん】「助けてくれー、おりゃー泳げねえんだよー、アアッ苦しい、目が 回るー」 伏見の旅籠 [ 去るほどに、船は右に竿さし左に綱引き上るに、早くも八幡、山崎を後にして淀の堤を打ち過ぎ、夜も明け近くなりたる頃、伏見港に着いた。苫(莚で屋根をふいた)より漏れる光は白く、カラスの声あたりに響き、船着きたりと、乗合皆々目を覚ます。北八弥次郎も苫を打ちひらいて、笠ふろしき包を手に引さげ、船頭があゆみ板わたすを、打ち渡りて岸にのぼり、船宿にいたるに、

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    k10no3 2023/07/10
  • いまは昔、貧しき女が清水の観音に参籠し運を得た話 - 花と木と山が好き

    今は昔、清少納言が『枕草子』を著したずっと前のことだ。京に住んでいた若い女が、貧しい暮らしでいっこうに生活は楽にならなかったので、清水の観音さまに願をかけていたが、少しもききめがなかった。そこである日、いつものようにお籠りして、観音さまに申し上げるには、「わたくし長年の間、観音さまを信仰いたしまして、足しげくお参りしてまいりましたが、相変わらずの貧乏暮らしでべるものにも不自由し、いっこうに暮らし向きはよくなりません。これも前世の報いかもしれませぬが、せめて少しばかりのご利益をいただけないものでしょうか?」、とお願いしているうちに眠気が襲ってきて、つい横になるうちに眠ってしまった。 ひと晩中、僧侶が大声で勤行しているのだろう、法螺貝や鐘の音、人を呼ぶ声にまじって僧侶の祈祷する声などが堂内に響き、夢うつつにも聞えてくる。その夜は三七日(さんしちにち)の間、お籠りをして、今日が満願に当る日だっ

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    k10no3 2023/06/29
  • 俵屋宗達「風神雷神図屛風」のもとあった寺 臨済宗建仁寺派 - 正覚山妙光寺を訪ね寺院建築の粋を知る - 花と木と山が好き

    その一風変わった水墨画家との出会いは、観光地としての京都からはちょっと外れた、昭和感たっぷりの西陣の片隅にあるような、そんな環境のなかではモダンなしつらえの喫茶店だった。いつものように散歩をかねたスナップ写真を撮り終えて休憩に立寄ったときだった(この時がニ三度目の入店だった)。 カウンターの隅には先客がひとり、髭をたくわえた年配の男だった。コーヒーを注文し終えると、その男はわたしに向ってやおら「わしとあんた、どっちが年上に見えるかな?」と訊いてきた。この爺さん、なにを言い出すんだろう、誰が見たってあんたに決まってるやろ、と思ったものだ。ところがその男は、きっと自分の方が若い(若く見える)というのである。 妙光寺への道 それから二カ月ほど経って、再びその喫茶店を訪ねた。店のママさんがいうには、昨日あの絵描きさんが来ていたと教えてくれた。なんでも明日まで宇多野の方の寺で美術展を開いているとか。

    俵屋宗達「風神雷神図屛風」のもとあった寺 臨済宗建仁寺派 - 正覚山妙光寺を訪ね寺院建築の粋を知る - 花と木と山が好き
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    k10no3 2023/06/05
  • 漱石『猫』の登場人物のモデルとなった寺田寅彦の珍研究「椿の花 ー 空気中を落下する特異な物体の運動」とは - 花と木と山が好き

    先日久しぶりに漱石の『吾輩はである』を読んだ。実に五十余年ぶりである。一度目は、たしか高校生の頃に夏休みの宿題で感想文を書くために読んだような覚えがある。今回読んで感じたのは、こんなに面白い小説だったかしら、ということだった。 「」はアララギ同人の高浜虚子に依頼されて執筆し、アララギに掲載されたものだったように記憶するが、その「」が面白いと評判をよび、続編が次々に書かれたようだ。わたしが好きなのは、初めの頃の「」である。 その「」二の章に次のような文章がある。… の観察として読んでみて。 " しばらくすると下女が来て寒月さんが おいでになりましたという。この寒月という男は矢張り主人の旧門下生であったそうだが、今では学校を卒業して、何でも主人より立派になっているという話である。この男がどういう訳か、よく主人の所へ遊びに来る。来ると自分を恋つて(おもって)いる女が有りそうな、無さそ

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  • ただのケチとは違う 京の大金持ち藤屋市兵衛(井原西鶴-世界の借屋大将) - 花と木と山が好き

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    k10no3 2022/08/30
  • 平家物語「大原御幸」の道をたどってみた2 ― 天武天皇が逆賊に襲われお隠れになった静原は城塞都市のよう? - 花と木と山が好き

    静原の里 さて後白河法皇一行は、市原から大原寂光院へ向うのにどの道を通っていったのだろうか。『平家物語』ではそのことには何一つ触れていない。思うに上高野まで戻って高野川沿いに若狭道を大原へ歩くとなると倍以上の距離を歩くことになるのでその道は考えられない。やはりここは市原の東へ輿を向け、静原の里を通り江文峠を越えて行ったとするのが無理がないであろう。 それではしばしの間 静原の里を歩いてみよう(わたしにとっては電車とバスを使っての「大原御幸」二日目の旅である)。 静原下の町 静原の里を訪ねるのは実に三十余年振りだろうか。自転車やバイクなどで通り過ぎるだけでは何の面白みもない集落だった覚えがあるが、今回半日ほど探索してみてなかなか趣のある集落であることが分った。天皇社でバスを降り、参拝を終えてから集落へ入った。 大原への道 静原には土蔵が多くみられる どういうわけか土蔵は土壁がむき出しのものが

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    k10no3 2022/07/20
  • 「美味しんぼ」海原雄山のモデル 北大路魯山人を追う - 花と木と山が好き

    かつて『美味しんぼ』という漫画があった(今でも続いているのかも)。大人向けの週刊漫画誌に連載されていた。わたしは第一回目からの読者であったが、主人公の山岡が同僚の女性と結婚したころから読まなくなってしまった。 西賀茂小谷墓地入口付近 その漫画に出てくる山岡の父親に北大路魯山人をモデルとした海原雄山がいた。魯山人をモデルとしていたと書いたけれど、実のところはわからない。実在の魯山人と海原雄山とは、とてもじゃあないけど似ているとは言えないと思うのだが…。 小谷墓地入口にある石仏 わたしは魯山人の熱烈なファンと言うわけではないけれど、どういうわけかいつも気になる存在の人であった。四十年ほど前から伝記を読んだり、魯山人の陶磁器であったり、篆刻であったり、書画などを機会があれば鑑賞していた。だけれどいつも距離を置いていたような気がする。 真夏のように暑い日、ふと思いたって魯山人(名は北大路房次郎)

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    k10no3 2022/06/21
  • 河上肇と櫛田民蔵と法然院と - 花と木と山が好き

    京都大学の学生たちと芥川賞作家の話をする だいぶ以前のことだけれど、京大生数人と百万遍のとある居酒屋で一杯やったことがある。現役の京大生が芥川賞を受賞したころだ。カメラの話などをして小説のことや随筆の話などにいたった。 そして京大の先生だった方で印象に残る小説、あるいは随筆を書いた人は誰かという話になった。学生たちがどんな話をしたか覚えてはいないが、わたしは小説と随筆は露伴(一年間だけ教師をしている)、随筆と漢詩なら河上肇を推した。学生の反応はといえば露伴の名は聞いたことがあるが、河上肇は知らないという。 工学部と農学部の学生なので京大の経済学博士の名は知らなくても不思議ではないのかも知れない。それも戦前の学者なのだから(ちなみに西田幾多郎氏や新渡戸稲造氏の名と業績は知っていて こちらが教えられた)。 法然院山門を境内より望む 大掃除をしていて古書を引っ張り出す 話はかわって、先日納戸を大

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    k10no3 2021/11/23
  • 洛北二ノ瀬と「伊勢物語」を結びつけるって無茶ぶり? - 花と木と山が好き

    小野小町が晩年を過ごしたと伝わる市原の里を後にして、次に向った先は貴船の少し手前にある二ノ瀬の里である。ここは“悲運の親王”として名高い(?)文徳天皇第一皇子の惟喬親王を祀っている神社のあるところなのだ。いつもなら叡山電鉄に乗り、二ノ瀬駅で降りて付近を周遊するのだけど、この時はまだ市原 ー 鞍馬間が不通(令和三年九月十八日運転再開)だったので歩いて行った。市原の北隣なので歩いても三十分ほどだろうか。 途中には旧家らしき家がある 二ノ瀬集落全景(二ノ瀬駅より) 鞍馬街道から外れて、少し西に向って歩くと山際に二ノ瀬駅(無人駅)がある。二ノ瀬集落が見渡せる位置にあるので、新緑と紅葉の時期には人気のある駅だ(ついでだし立ち寄ってみた)。向い側の山は近年の台風の爪痕のようで、北山杉が倒れた跡があり山の地肌がむき出しになっている。写真下部の方には、集落を東西に分断するように鞍馬川(鴨川の上流)が流れて

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    k10no3 2021/09/20
  • 小野小町の最期の地 補陀洛寺を訪ねてみた - 花と木と山が好き

    京都駅から北へ十キロ余り行くと貴船や鞍馬のちょっと手前に“市原野”という集落がある。かつては山間の農村地帯であったが、いつの間にか山は削られ、田んぼや畑は工場や住宅地と化してしまった。平安の昔にはこの地は鳥辺野や化野、紫野などと同様に 人の亡骸を葬ったところのようだ。その証拠にあちこちから相当数の石仏が掘りだされている。かなり以前には「イ」の形をした送り火が灯されていたところでもある。 その“集落”の入口に宗派は異なるけれど四つの寺が寄り添うように集まっている。そのうちの一つが今回紹介する補陀洛寺(ふだらくじ)、通称「小町寺」と呼ばれ小野小町が晩年を過ごしたと伝えられている地にある寺である。 大神宮社 叡電出町柳駅から電車に乗り市原駅(この路線はほとんどが無人駅)で下車する。駅の南東に“大神宮社”という社があったので手はじめにここからお参りする。この社には40年前にも一度来ているのだが、社

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    k10no3 2021/09/10
  • 秋雨に濡れそほつ花 - 花と木と山が好き

    芙蓉と百日紅は夏の花とばかり思いこんでいた。夏の強い日差しに似合うと決めこんでいた。しかし どうしてどうして、秋の雨に悩める芙蓉は、春の海棠にも劣らず「まことに花の美しくあはれなる、これに越えたるはあらじ」と思う。 萩には崩れた築地が似合う 山間の集落で カメラ:Nikon D700  レンズ:AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR Ⅱ フルサイズにAPS-C用のレンズは邪道かもしれないけど、これがまたD700との相性がいい! フルサイズで使用する場合には30-55mmの画角ならケラレもせずgood! 雨の日でも意外と使える(晴天下ならバッチリ)。 sasurai1.hatenablog.com

    秋雨に濡れそほつ花 - 花と木と山が好き
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    k10no3 2021/09/04