文=水野 孝彦(日経レストラン) イラスト=蛭子 能収 このコラムでは、架空の外食企業のクレーム対応担当者の日常を通して、最善のクレーム対応を考えていきます。 ○月×日 午後 お客は選ばざるを得ない 「もう店に来るな、と失礼な店員に言われたわ。その人をクビにしてちょうだい!」。少し前、あるお客から私のもとに、こんな抗議の電話が何回もかかってきた。 このお客は中高年の女性客で、高齢の母親と一緒にショッピングセンターにある当社の店を、定期的に利用してくれる常連客だった。それだけならありがたいのだが、問題は、来店のたびに2~5時間という長時間にわたって母親を店に置いたまま、帰ってこないことだった。 この母親は車イスの利用者で、高齢のため自分一人の力では動けない。長時間放置されると、トイレに行けずに失禁してしまう……。その結果、周囲に異臭を放ち、周りのお客様にご迷惑を掛けていた。実際、