【「俺は地方病博士だ」】 山梨県内において長く人々を悩ませた「日本住血吸虫病」、いわゆる地方病は、甲府盆地を中心に流行した病気であり、田んぼで手足が漆にかぶれたようになり、手足が痩せ衰え腹部のみが太鼓のようになり、人間のみでなく牛や馬も罹る病気として恐れられてきたが、その原因は不明であり解決には至らぬ状況が長く続いていた。 その後、明治37年に日本住血吸虫が確認され、大正2年に感染経路や中間宿主が発見されるなど、地方病の実像が明らかになった大正期には、地方病に対する種々の普及活動が行われることとなったのである。 こうした中、大正6年5月に発行された小冊子が『俺は地方病博士だ』である。 この小冊子は山梨地方病研究部が地方病普及の目的をもって小学校児童に愛読させるため、先に募集した説明文に絵画を配し印刷発行したものであるが、経費の関係上その発行数は15,000部となり、当該発行数では当時の山梨