引越しの準備をしていたら、昔のことを思い出したので、日記の代わりに書き残す。 その日は親族のみの通夜で、神式だった。 参列者も斎主も既に揃い控え室にいて、雰囲気は穏やかだった。 一つあったことといえば、斎主がレイジ(位牌)に書く日付を間違えてしまい、今書き直していることくらいだ。 スタッフは葬儀担当者、司会の先輩、案内の私の3人。 そこは火葬場に複数併設された式場のひとつだった。 忙しそうな他の式場の様子を眺めていると、控え室にいた喪主が降りてきて「祭壇を見てもいいですか?」と言った。 神式の祭壇は、仏式とは雰囲気が違う。壇の上には鯛、生卵、生米、野菜や乾物などのお供えが並び、白い陶器で出来たさまざまな神具。周りには花はなく榊が飾られている。 一頻り祭壇を眺めていた喪主が「あの中央の鏡はなんですか?」と聞く。 「あの鏡は御本尊のようなもので、一番大切な神具ですよ」 へー…この鏡が、喪主が祭
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