コンピューターが普及すれば、人々はつらい仕事から解放される。人間は、想像力を発揮するような仕事をすればいいじゃないか、という議論がある。この種のもっともらしい話は、たいていの場合は少し前の時代の賢人の言葉が人口に膾炙されるうちに、元の文脈を離れて語られている。 「人間は人間らしい仕事をすればいい」の原典は、おそらく土光敏夫氏の次の言葉だろう。 人間には人間らしい仕事を、そのために機械がある。 自分には自分らしい仕事を、そのために仲間がいて、組織がある。 土光敏夫と聞いてももうピンとは来ないかもしれない。私が子どもの頃にはまだご存命だったが、子どもの私にはメザシが好物のヨボヨボのお爺さん、という印象しかなかった。もちろん、こんな言い方は大変失礼で、石川島播磨重工(現IHI)や東芝の社長を務め、国鉄や電電公社、専売公社の民営化を決めた「土光臨調」の会長だった超大物財界人である。 土光氏は東京高
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