※本稿は『十四世紀の歩兵革命』の記事と合わせて読むことを推奨する。 中世ヨーロッパは、騎兵が優越的な立場を築いていた時代として知られている。この「騎兵の優越」の概念の中で、戦争の主役は馬に乗り騎槍を水平に構えて突進する騎兵である。そしてその認識は、中世末期から近世初頭にかけて強力な投射兵器が戦場に現れると「騎兵の優越」が失われ、歩兵と砲兵が力を発揮する新時代が到来したという、不正確な理解へとつながる。 もちろん実際の展開は、そのような単純なものではなかった。ここでは中世の騎兵が一般に思われているほどに圧倒的な存在ではなかったことを示し、その文脈の中で再定義された中世ヨーロッパにおける「騎兵の優越」を明確にする。 「騎兵の優越」の論点 中世ヨーロッパにおける「騎兵の優越」には大きな主題が四つ存在する。一つは時期的な議論で、いつから始まったのかという問題である。次の二つは表裏の関係にあるが別個
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