経済評論家の池田信夫氏が「デフレを巡る3つの神話 日銀をいじめたらデフレから脱却できるのか」と言うコラムを書いているので、簡単に批判してみよう。 予想通りだが、【神話1】と【神話3】は経済学的なバックグラウンドを失った議論になっており、奇妙な言説になっている。評論するのは自由だが、クルッグマンのIt’s Baaack!論文を良く読んでからの方が、もっとまともな文章を書けると言わざるを得ない。 【神話1】不況の原因はデフレである 池田信夫氏はデフレが不況を引き起こさないと主張している。しかし、これは大きな留保条件がつく。つまり、(1)自然利子率が十分に高く、(2)賃金や価格の調整速度が十分に迅速な時のみ成立するからだ。 理論的には考えられる負の自然利子率の可能性(平田(2012))については言及していないし、慶應大学の小幡績氏が紹介した東大の渡辺努氏の研究では、価格が緩慢にしか下がらないこと