タグ

ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (12)

  • クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』 - 西東京日記 IN はてな

    2023年にノーベル経済学賞を受賞したゴールディンによる一般向けの書。 ここ100年のグループを5つに分けてアメリカの女性の社会進出の歴史をたどるとともに、それでも今なお残る賃金格差の原因を探っています。 世代についての叙述も面白いですが、ここでは現在の賃金格差の原因となっている「どん欲な仕事」についての部分を中心に紹介したいと思います。 目次は以下の通り。 第1章 キャリアと家庭の両立はなぜ難しいか―新しい「名前のない問題」 第2章 世代を越えてつなぐ「バトン」―100年を5つに分ける 第3章 分岐点に立つ―第1グループ 第4章 キャリアと家庭に橋をかける―第2グループ 第5章 「新しい女性の時代」の予感―第3グループ 第6章 静かな革命―第4グループ 第7章 キャリアと家庭を両立させる―第5グループ 第8章 それでも格差はなくならない―出産による「ペナルティ」 第9章 職業別の格差の原

    クラウディア・ゴールディン『なぜ男女の賃金に格差があるのか』 - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2024/06/03
  • 岸政彦/梶谷懐編著『所有とは何か』 - 西東京日記 IN はてな

    私たちはさまざまなものを「所有」し、その権利は人権の一部(財産権)として保護されています。「所有」は資主義のキーになる概念でもあります。 同時に、サブスクやシェア・エコノミーの流行などに見られるように、従来の「所有」では捉えきれない現象も生まれています。 書は、この「所有」の問題について研究者が集まって書いたなのですが、まずは冒頭の岸政彦とつづく小川さやかの論文で、私たちが生活していく上でかなり強い足場として認識している「所有」が、そうした足場になっていない社会の様子が紹介され、その後に経済学歴史学や社会学の立場から「所有」が論じられています。 「所有」だけではなく、「制度」や「秩序」といったものについても考えが広がる、面白い内容になっています。 目次は以下の通り。 第1章 所有と規範―戦後沖縄の社会変動と所有権の再編(岸政彦) 第2章 手放すことで自己を打ち立てる―タンザニアのイ

    岸政彦/梶谷懐編著『所有とは何か』 - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2023/08/05
  • ジェレミー・ブレーデン/ロジャー・グッドマン『日本の私立大学はなぜ生き残るのか』 - 西東京日記 IN はてな

    なんとも興味を引くタイトルのですが、実際に非常に面白いです。 2010年前後、日では大学の「2018年問題」が新聞や雑誌を賑わせていました。これは2018年頃から日の18歳人口が大きく減少し始め、それに伴って多くの私立大学が潰れるだろうという予想です。 ところが、2022年になっても意外に私立大学は潰れていません。もちろん、経営的に厳しいところは多いでしょうが、なんとか生き残っているのです。 この謎にオーストラリア・モナッシュ大のブレーデンと、イギリス・オックスフォード大のグッドマンが迫ったのが書です。 ふたりは社会人類学者であり、「異文化」として日の中小私立大学を観察し、その特徴を明らかにするとともに、「同族経営」という日では見過ごされることが多い部分にレジリエンス(強靭さ)を見ています。 特にグッドマンが2003年度に大阪のメイケイ学院大学(大阪学院大学と思われる)で研究し

    ジェレミー・ブレーデン/ロジャー・グッドマン『日本の私立大学はなぜ生き残るのか』 - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2022/02/12
  • よりよい床屋政談のために〜2021年衆院選のためのブックガイド〜 - 西東京日記 IN はてな

    岸田内閣が成立し、衆議院の総選挙が10月31日に決まりました。政治好きとしては「総選挙」と聞くだけでなんとなく盛り上がってしまうのですが、ここ数回の国政選挙に関してはその結果に不満を持っている野党支持者、あるいは無党派の人も少なくないと思います。 「なぜ自民が勝ってしまうのか?」、「毎回野党に勝ち目がなさそうなのはなぜなのか?」と思う人もいるでしょうが、その理由を何冊かのと考えてみたいというのがこのエントリーの狙いです。 まず、出発点となるのは谷口将紀『現代日の代表制民主政治』(東京大学出版会)の2pに載っているこのグラフです。 グラフのちょうど真ん中の山が有権者の左右イデオロギーの分布、少し右にある山が衆議院議員の分布、そしてその頂点より右に引かれた縦の点線が安倍首相のイデオロギー的な位置です。 有権者のイデオロギーよりも、衆議院議員のイデオロギーが右側にずれており、さらに安倍元首相

    よりよい床屋政談のために〜2021年衆院選のためのブックガイド〜 - 西東京日記 IN はてな
  • スーパークレイジー君の当選によせて - 西東京日記 IN はてな

    2021年1月31日の埼玉県戸田市の市議会議員選挙(定数26)において、2020年の都知事選でもそのパフォーマンスが話題なったスーパークレイジー君こと西誠氏が25番目の912票の得票で初当選しました(政治家としてもスーパークレイジー君として活動するとのことなので、以下もスーパークレイジー君で)。 都知事選では「百合子か、俺か」のキャッチフレーズやそのパフォーマンスからイロモノ候補かと思っていたのですが、政見放送を見たら非常に真面目な主張をしていて驚いた記憶があります。 今回の当選を受けて、マスコミでも話題を集めていますが、今回のスーパークレイジー君の当選には「驚いた」「ウケる」といった要素だけではなく、日の選挙や民主主義を考える上での重要な問題が含まれていると考えるので、以下、2つの面から考えてみたいと思います。 1. 日の地方議会の選挙制度の問題 今回の戸田市議会議員選挙の結果は以

    スーパークレイジー君の当選によせて - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2021/02/05
  • コロナと読書 - 西東京日記 IN はてな

    タイトルからするとコロナ禍の中での読書生活の記録みたいに思えますが、そうではなくて、1学期も終わって少し落ち着いたところで、新型コロナウイルス問題を考える上で参考になったをいくつかあげておこうというエントリーです。 とは言っても、医学的な問題には疎いですし、ウイルスや感染症についてのを読み込んでいるわけもないです。正直、新型コロナウイルスがどうなるかどうかはわからないですし、「コロナ後」の世界についても何か見通しを持っているわけでもありません(ニュースになり始めた段階では2009年の新型インフルエンザのことを思い出して、「これはどこかで2週間位の休校があるか?」と思っていた程度でしたが、2週間じゃすみませんでしたね)。 ここで紹介するのは新型コロナウイルスが引き起こしたさまざまな問題の文脈を考えるためのが中心になります。新型コロナウイルスに関する知識は今まさに生まれつつあるところです

    kamanobe
    kamanobe 2020/08/14
  • 2019年の本 - 西東京日記 IN はてな

    毎年恒例のエントリー。今年はまず小説以外の(と言ってもほぼ社会科学のですが)を読んだ順で9冊紹介します。 小説に関しては去年は順位をつけませんでしたが、今年は順位をつけて5冊紹介します。 ちなみに新書のほうは以下に今年のベストをまとめてあります。 blog.livedoor.jp ・ 小説以外の ジョージ・ボージャス『移民の政治経済学』 移民は受入国にどんな影響をあたえるのでしょうか? 経済を成長させるのでしょうか? それとも減速させるのでしょうか? あるいは移民の受け入れによって損する人と得する人が出てくるのでしょうか? このアメリカのハーバード・ケネディスクールの教授で、長年移民について研究してきた著者が、移民のもたらす影響をできるだけ詳しく分析し、上記の問に答えようとしたになります。 日でもこれから「移民は是か非か」、「移民は日経済を救うのか?」といった議論がなされて

    2019年の本 - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2019/12/28
    「気候カジノ」読みたい。
  • ポール・コリアー『エクソダス』 - 西東京日記 IN はてな

    『最底辺の10億人』、『民主主義がアフリカ経済を殺す』などの著作で知られる開発経済学者のポール・コリアーが移民について論じたトランプ大統領の誕生にBrexitと、移民の問題がクローズアップされる機会が続きましたが、このの原書が出たのは2013年であり、トランプやBrexitについては論じていません。それでもいくつかの問題に関しては先取りして論じていおりますし、また、移民問題は解決したわけでものないので、まだまだタイムリーな内容となっています。 また、「最底辺の10億人」を研究テーマとしてきた著者らしく、移民を受け入れる側だけではなく、送り出す側への影響についても紙幅をとって分析しているのが特徴です。 著者は移民のもたらす正負の影響を分析しながら、最適な移民の規模や政策というものを探ろうとしています。 目次は以下の通り。 プロローグ 1 第Ⅰ部 疑問と移住プロセス 第1章 移民という

    ポール・コリアー『エクソダス』 - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2019/10/26
  • クリストファー・R・ブラウニング『増補 普通の人びと』 - 西東京日記 IN はてな

    ナチ・ドイツによるユダヤ人の虐殺について、多くの人はアウシュビッツ−ビルケナウに代表される絶滅収容所による殺害という印象が強いと思います。 そこでは、工場における分業のような形で毒ガスによる虐殺が行われ、多くのドイツ人が自らの職務を果たすことで虐殺が完成しました。アレントはそうした官僚的な虐殺者としてアイヒマンを描き出し、それに「悪の陳腐さ」という言葉を与えました(実はアイヒマンは筋金入りの反ユダヤ主義者が法廷での「平凡さ」は演技だった可能性が高い。野口雅弘『忖度と官僚制の政治学』参照)。 しかし、ユダヤ人の虐殺はガス室のみで行われたのではありません。ホロコーストの犠牲者およそ600万人のうち、20〜25%が射殺によるものであり、20%と考えてもおよそ120万人と相当な数を占めています。 こうした射殺を行った部隊としてラインハルト・ハイドリヒ率いる特別行動部隊(アインザッツグルッペン)が有

    クリストファー・R・ブラウニング『増補 普通の人びと』 - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2019/08/09
  • 大山礼子『政治を再建する、いくつかの方法』 - 西東京日記 IN はてな

    『日の国会』(岩波新書)が非常に面白かった著者による現在の日政治についての提言の書ですが、政治学への入門書ともなっていると思います。 叙述のスタイルは違えども、方向性は砂原庸介『民主主義の条件』と似ています。議会制民主主義の行き詰まりに対して、それを一新するラディカルなアイディアを出すのではなく、「まだまだ今の制度の中でも直せるところはたくさんありますよ」と提言するものとなっています。 『民主主義の条件』が選挙制度を中心に論じていたのに対して、こちらは著者の専門である議会の運営方法に力点を起きつつ、最高裁のあり方などまで幅広く論じているという違いはありますが、「中選挙区はよくない」、「参議院の選挙制度は問題」、「自書式をやめたほうがよい」など共通する提言も多くいです。 これは多くの政治学者の間でコンセンサスがあるってことでしょうし、それにもかかわらず実現できていない改革がまだまだあると

    大山礼子『政治を再建する、いくつかの方法』 - 西東京日記 IN はてな
    kamanobe
    kamanobe 2018/12/14
  • 西東京日記 IN はてな

    『番号を創る権力』の羅芝賢と『市民を雇わない国家』の前田健太郎による政治学の教科書。普段は教科書的なはあまり読まないのですが、2010年代の社会科学においても屈指の面白さのを書いた2人の共著となれば、これは読みたくなりますね。 morningrain.hatenablog.com morningrain.hatenablog.com で、読んだ感想ですが、かなりユニークなであり教科書としての使い勝手などはわかりませんが、面白い内容であることは確かです。 書の、最近の教科書にしてはユニークな点は、序章の次の部分からも明らかでしょう。 この教科書ではマルクスを正面から取り上げることにしました。それは、マルクスの思想が正しいと考えるからではなく、それを生み出した西洋社会を理解することが、日をよりよく知ることにつながると考えたからです。 20世紀以後の日政治学は、欧米の政治学の影響を

    西東京日記 IN はてな
  •  北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か』 - 西東京日記 IN はてな

    まだ、できた当初のゲンロンカフェに「社会学と現代思想―その微妙な関係」という北田暁大の講演を聞きに行ったのが2013年。そのときのアフターのトークで「宮台真司の『サブカルチャー神話解体』の現在版みたいな調査と分析をやっている」という話を聞いたのですが、その調査と分析がようやく書籍化されました。 その時に、「『サブカルチャー神話解体』の分析が今でもけっこう当てはまっていたりする」ということを言っていた記憶があるのですが、このの共著者名にクレジットされている「解体研」とは「『サブカルチャー神話解体』という神話を解体する」という意味合いで付けられた名称だといいます(347p)。 このように、このは宮台真司の『サブカルチャー神話解体』のある種の有効性を認めつつもその意味を批判的に再検討する、というややアクロバティックな内容となっています。 さらにこので批判的な乗り越えが目指されているのがブル

     北田暁大+解体研『社会にとって趣味とは何か』 - 西東京日記 IN はてな
  • 1