お父さんはニコッと笑うと、スーッと空気に溶けるように消えていく。 (そんな…これで終わり? もっともっと話したい事があるのに!) 「待って!」 俺は思わず手を伸ばして…そこで目が覚めた。 ベッドに横たわったまま伸ばした右手の向こうには、見慣れた天井があるだけ。 (…?) いきなり光景が変わった事に少し混乱したけれど、だんだんと覚醒してきてた。 「…夢か」 ぱたり、と力なく腕を降ろして夢の内容を反芻する。 昔と変わらない温かくて大きな手。幸せになりなさいと言った時の優しい笑顔。 愛に溢れた最後の言葉を思い出して、目尻にじわっと涙が滲み、手の甲で目元を覆った。 (あれは記憶なんかじゃない。本当のお父さんだった) シヴァが夢の内容を操れないというのは、嘘じゃないだろう。そもそもシヴァは漢字を知らないから、名前の由来やそこに込められた意味を知り得ない。 (お父さんが妹に生まれ変わるとか、かなり衝撃