安いことは本当にいいことなのだろうか。佐賀県嬉野市の茶農家たちが2017年、1杯5000円で特産品「うれしの茶」を振る舞う観光プログラムをはじめた。かつて地元の飲食店やホテルが無料で提供していたお茶に、なぜ高い値段をつけたのか。フリーライターの伏見学さんが、茶農家たちに狙いを取材した――。 「うれしの茶」に起きている地殻変動 佐賀県の南西部。長崎県と隣接する人口約2万5000人の嬉野市。2022年9月に開業した西九州新幹線によって、実に91年ぶりに鉄道駅がこの街にできたことが話題になったのは記憶に新しいだろう。 嬉野の名産といえば、日本三大美肌の湯と呼ばれる「嬉野温泉」、400年以上の歴史を持つ工芸品「肥前吉田焼」、そして、やぶきたを主力品種とした「うれしの茶」である。昨今、そのお茶に“地殻変動”が起きている。