親と子で介護に対する考えが食い違うケースが増えている。高齢になった親は子を当てにしているが、子は「かかわりたくない、鬱陶しい」と避けたがる。社会学者の春日キスヨ氏は、実際に介護に苦しんだ家族の実例をあげながら、介護について「親子で早めに話し合うべき」と警鐘を鳴らす――。 ※本稿は、春日キスヨ『百まで生きる覚悟』(光文社新書)の第3章を再編集したものです。 倒れた後、同居の息子家族が関わらないOさん Oさんは95歳。1923年(大正12年)生まれ。夫は1年前に死去。自分は離れに、本宅に息子(65歳)夫婦が住む。80代後半まで社会活動にも参加し、92歳までは子どもに頼らず家事を担い、所有する貸家の管理もした「元気長寿者」。だが、93歳の時、病気で倒れる。その際、息子が面倒を将来的にも見てくれるものと信じ、自分名義の預金通帳、土地家屋の権利書、実印などいっさいを渡した。しかし、退院後、息子夫婦が