手袋を買いに走れ 太宰南吉 子狐は激怒した。必ず、除かなければならぬと決意した。「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴早く早く」と言いました。 母さん狐がびっくりして、あわてふためきながら、眼を抑えている子供の手を恐る恐るとりのけて見ましたが、何も刺さってはいませんでした。母さん狐は洞穴の入口から外へ出て始めてわけが解りました。昨夜のうちに、真白な雪がどっさり降ったのです。その雪の上からお陽さまがキラキラと照していたので、雪は眩しいほど反射していたのです。雪を知らなかった子供の狐は、あまり強い反射をうけたので、眼に何か刺さったと思ったのでした。子狐は、人一倍に敏感であった。 子供の狐は遊びに行きました。村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた市にやって来た。衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。真綿のよう