ウクライナ、ポーランド、ベラルーシ、バルト三国。西欧諸国とロシアに挟まれたこの地で起きた人類史上最悪のジェノサイド。旧ソ連体制下で歪曲・隠蔽されてきた事実を掘り起こし、殺戮の全貌を初めて明らかにした歴史ノンフィクションがついに学芸文庫に入った。今日の世界で『ブラッドランド』をどう読むべきか? 文庫化に際し、訳文にあらためて向き合った翻訳家の布施由紀子さんに、現在の思いを綴っていただいた。(PR誌「ちくま」12月号より転載) 2015年に翻訳出版されたティモシー・スナイダー著『ブラッドランド──ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実』が、このほど著者あとがきを加えた新版の学芸文庫としてお目見えする。実質的にはこの春本国アメリカで出版された改訂版ペーパーバックの翻訳だが、本文自体の内容に大きな変更はない。 著者のスナイダー氏は中・東欧史を専門とするイェール大学歴史学部の教授。学生時代はいつか外交官