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ブックマーク / honz.jp (129)

  • 『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』 - HONZ

    私は、1年のうち少なくとも3ヶ月は、海外で恐竜化石調査を行っている。主な調査地は、モンゴル・アラスカ・カナダ・中国、そして日である。2017年4月には、北海道むかわ町穂別から発見された日で最初の大型恐竜の全身骨格について、発表をした。全長8メートルのハドロサウルス科という恐竜で、全身の8割以上が揃っている、世紀の大発見だ。私の研究は、それだけではない。恐竜から鳥類への進化の過程についても研究をしている。爬虫類的な恐竜から、鳥型の恐竜へと進化していくそのプロセスに注目しているのだ。脳の進化、消化器官の進化、翼の進化など、「恐竜の鳥化」というものをキャリアのテーマとしている。私だけではなく、世界中の恐竜研究者の成果によって、最近では「鳥は恐竜である」ということが定着してきた。つまり、世界中の鳥類研究者は、“恐竜研究者”ということになる。 * 最初に『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』が出版され

    『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』 - HONZ
  • 数奇な運命をたどった本 『ある奴隷少女に起こった出来事』 - HONZ

    新潮文庫のラインナップに、新たな古典名作が加わった。しかし、『小公女』や『若草物語』のようなフィクションではない。著者自身が序文で「読者よ、わたしが語るこの物語は小説ではない」と言明している通り、「ある奴隷少女」人が奴隷制の現実をつづった世にも稀なる手記なのである。アメリカでは、すでに大ベストセラーになっているが、日でも長く読み継がれるになるに違いない。 内容に入る前に、書がたどった数奇な運命についてふれたい。書が刊行されたのは、1861年である。作中人物が存命だったため、「リンダ・ブレント」というペンネームで執筆され、一般的には、白人著者によるフィクションとみなされて読まれた。奴隷解放運動の集会などで細々と売られたが、次第に忘れ去られ、関係者の死とともに著者・ジェイコブズとのつながりも分からなくなっていった。 転機が訪れたのは、出版から126年を経た1987年。歴史学者がジェイ

    数奇な運命をたどった本 『ある奴隷少女に起こった出来事』 - HONZ
    kaos2009
    kaos2009 2018/06/27
  • 『ゲッベルスと私 ナチ宣伝相秘書の独白』 - HONZ

    作者:ブルンヒルデ・ポムゼル、トーレ・ハンゼン 翻訳:森内 薫、赤坂 桃子 出版社:紀伊國屋書店 発売日:2018-06-21 ヒトラーの時代を考える ヒトラーと、その右腕ゲッベルス宣伝相が作り出した大衆的熱狂の先には、戦争と破壊、そして未曾有の大量殺戮が待ち受けていた。偏狭な自民族中心主義と極端な反ユダヤ主義、人種差別主義(レイシズム)が第二次世界大戦と結びついて、ヨーロッパを「暗黒の大陸」へと変えたのだ。戦後、世界は解放された各地の強制収容所に累々と積み上げられた犠牲者の屍に絶句し、「二度と繰り返してはならない」と誓ったのである。 それから73年が経過した今、ドイツ、オーストリアを始め世界各地でポピュリズム、排外主義の動きが不穏な高まりを見せている。人権と民主主義を軽んじる政治的指導者が名乗りをあげるなか、あらためてヒトラーの時代を考えることには大きな意味があるだろう。ヒトラーは大衆民

    『ゲッベルスと私 ナチ宣伝相秘書の独白』 - HONZ
    kaos2009
    kaos2009 2018/06/21
  • 九歳でロケット、十四歳で核融合炉を作った「天才」──『太陽を創った少年』 - HONZ

    この世には「ギフテッド」と呼ばれる神から与えられたとしか思えない才能を持つ凄い人間たちがいる。そのうちの一人がアメリカ、アーカンソー州のテイラー・ウィルソン少年だ。彼は9歳で高度なロケットを”理解した上で“作り上げ、14歳にして5億度のプラズマコア中で原子をたがいに衝突させる反応炉をつくって、当時の史上最年少で核融合の達成を成し遂げてみせた。 彼は核融合炉を作り上げるだけで止まらずに、そこで得た知見と技術を元に兵器を探知するための中性子を利用した(兵器用核分裂物資がコンテナなどの中に入っていると、中性子がその物質の核分裂反応を誘発しガンマ線が出るので、検出できる)、兵器探知装置をつくるなど、その技術を次々と世の中にために活かし始めている。書は、そんな少年のこれまでの歩みについて書かれた一冊であり、同時にそうした「少年の両親が、いかにしてのびのびと成長し、核融合炉をつくれる環境を構築してき

    九歳でロケット、十四歳で核融合炉を作った「天才」──『太陽を創った少年』 - HONZ
  • 『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ

    もはや毎日のように顔を合わせている人たちについての話だ。地域によって差はあるものの、都市部のコンビニでは外国人スタッフの存在はすっかり当たり前になった。自宅の最寄りのコンビニともなると7割くらいが外国人店員という印象なのだが、その割に知っていることはあまりにも少ない。タイトルを見た瞬間、自然と手が伸びた。 中身はコンビニの話にとどまらない。コンビニ店員のほとんどを占める私費留学生を中心としながらも、技能実習生、その他の奨学生、さらには在留外国人全般にわたる幅広い視野で外国人労働者の置かれる状況がまとめられた1冊である。 近い将来変わる見込みがあるものの、現状は技能実習生がコンビニでバイトをすることは認められていない。コンビニで働く人外国人のほとんどは、日語学校や大学で学びながら原則「週28時間」の範囲で労働する、私費留学生だ。中国韓国・ベトナム・ネパール・スリランカ・ウズベキスタンなど

    『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ
  • 『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』 - HONZ

    書『花殺し月の殺人──インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』は、2017年にダブルデイ社から刊行された、デイヴィッド・グランの最新ノンフィクション、Killers of the Flower Moon: The Osage Murders and the Birth of the FBI の翻訳である。 2017年4月18日の刊行以来、40週連続で《ニューヨーク・タイムズ》のベストセラーリストにランクインした話題作だ。《タイム》、《ウォール・ストリート・ジャーナル》、《シアトル・タイムズ》、《ブルームバーグ》、《ニューズデー》、《ライブラリー・ジャーナル》、《ペースト・ブック》、《BookBrowse.com》、《Literary Hub》、《カーカス・レビュー》、《スレート・マガジン》、《GQ》、《エンターテインメント・ウィークリー》、《ヴォーグ》、《スミソニアン》、《コスモポリタン

    『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』 - HONZ
  • 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 AI研究が明らかにした人間の弱点 - HONZ

    書店で、テレビで、ツイッターで、AIの二文字が踊っている。創造性あふれる小説の執筆や複雑なビジネスオペレーションの効率化など、これまで人間にしかできないと思われていた知的活動を、最新のAIが軽々と成し遂げたことを伝えるニュースは引きも切らない。 特に、将棋や囲碁のトッププロをAIが打ち破ったニュースは驚きとともに世界に伝えられた。ウサイン・ボルトより早く走る車やそろばん名人を凌駕する計算能力を示すコンピュータは当たり前のものとなったけれど、将棋や囲碁のように複雑でクリエイティビティが要求されるゲームは、大きな脳を持つホモ・サピエンスの専売特許のはずだった。そんな得意分野における人類最高峰がAIに敗れてしまったのだ。 AIブームは過熱するばかり。今後もAIは成長を続けることで人間の知能を追い越すというシンギュラリティ理論や、AIが人間に牙をむくことになるというAI脅威論も広まっている。果たし

    『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 AI研究が明らかにした人間の弱点 - HONZ
  • 『「日本の伝統」の正体』著者インタビュー - HONZ

    去る1月中旬、こんなメールが筆者のもとに届いた。「追加取材をしませんか」 柏書房の編集部からのものだった。文面によれば、筆者が年初にHONZで書いた『「日の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房)のレビューを皮切りに、正月中にAmazonは在庫切れ、紀伊国屋新宿店では完売、記事を見た他書店からも追加注文がぞくぞくと入ってきている……という状態だったそうだ。SNSを中心にびっくりするくらい拡散されていたのは気づいていたが、こうして実際に売れ行きが好調だと聞くと、レビュアーとしては嬉しいばかりだ。 それはともかく、初詣や恵方巻き、平安神宮の歴史が実は長くないという事実を含め、「日の伝統」と聞いて、なんとなくモヤモヤした思いや感情を持っている人がそれなりにいることも反響を見ながら感じていた。そんなわけで、柏書房に赴き、著者の藤井青銅さんにインタビューを行った。作家・脚家・放送作家とマルチに活躍

    『「日本の伝統」の正体』著者インタビュー - HONZ
    kaos2009
    kaos2009 2018/02/08
    “『「日本の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房)”
  • オリンピックに翻弄されたくなければ読むべし──『オリンピック秘史: 120年の覇権と利権』 - HONZ

    東京オリンピック・パラリンピックの大会運営費用や会場整備費用は、当初見込んでいた3013億を遥かに超えて総予算の計上は現時点ですでに2兆円を超えている。東京都民としては「おいおい、話が違うじゃねえか」と呆れるほかないところだが、いったい”オリンピックを運営する”、その裏側ではどのような力学が働いていて、”なぜこうなってしまうのか”。 書『オリンピック秘史: 120年の覇権と利権』は、そもそも現代のオリンピックがスタートした瞬間からはじまって、オリンピックの歴史を追うことで、その当の経済効果、開催することによるリスク、裏側でどのような陰謀や金が渦巻いているのか──といった政治と利権の構造を明らかにする一冊である。たとえば、特に21世紀に入ってからはオリンピックの運営費は当初の見積もりから数倍〜数十倍に膨れ上がるのが常態化しているが、その原因のひとつには、正直に費用を提示してしまうと、国民

    オリンピックに翻弄されたくなければ読むべし──『オリンピック秘史: 120年の覇権と利権』 - HONZ
  • 月1億8000万円稼いだ『ストリップの帝王』の栄枯盛衰 - HONZ

    文字通り「ストリップ産業の帝王」となった男の評伝だが、タイトルだけで敬遠すると損をする一冊かもしれない。 冒頭から過激だ。ストリップ劇場に刃物を持って押しかけてきたヤクザを、病院送りにするところから物語は始まる。殺人2件、殺人未遂7件のヤクザを失神させる男とはどんな男かと想像は膨らむ。ストリップという産業からしても主人公はチンピラ崩れかと思われるかもしれないが、実は元銀行員。1941年生まれの瀧口義弘は子どもの頃から腕っ節は強く成績優秀。高校は進学校に進んだが、大学への進学を拒否し、地元九州の地方銀行に就職する。 運命を変えるのは一の電話だ。瀧口の親族は銀行員や公務員など堅い職業が多いが、なぜか姉がストリッパーだったことが人生を決定づける。30歳を過ぎた頃に、劇場の経理を電話一で依頼され、子を残し、1975年に上京する。もちろん、仕事への不満もあったようだが、常人には理解しがたい決断

    月1億8000万円稼いだ『ストリップの帝王』の栄枯盛衰 - HONZ
    kaos2009
    kaos2009 2018/01/30
    [1970年代はストリップに本格的なブームが到来する前夜。インターネットなどもちろんなく、女性の裸に飢えた男どもを惹きつけていた。 ショーもダンサーの踊りで魅了する内容からどんどん過激になっていった。性器の露
  • 『カレーライスを一から作る』米も、野菜も、肉も、食器も! - HONZ

    カレーライスを一から作る。そう聞けば「ふむふむ、市販のルーを使わずに、スパイスをアレンジするのかな」と、まずは思うのが普通のリアクション。で、隠し味とか一手間とか、なにか工夫やアイディアがあって、と。実際「カレーライスをつくる」「カレーライスを語る」というは数多ある。なにしろ国民。美味しく作るために、どれほど多くの人々が、どれほど多くの情熱を傾けてきたことか。 しかしこのはそうではないのだ。表紙に小さく書いてある「関野吉晴ゼミ」の文字に気づけば、ただのカレーライスではないことがわかるだろう。 関野吉晴さんといえば、人類の足跡をたどる旅・グレートジャーニー! 1995年から2002年までフジテレビで不定期放送されていた紀行ドキュメンタリーで、世界中を飛び回っていた探検家である。植村直己冒険賞受賞、人類学者であると同時に外科医でもある。この日が誇る探検家がカレーライスをどうしたって?

    『カレーライスを一から作る』米も、野菜も、肉も、食器も! - HONZ
    kaos2009
    kaos2009 2018/01/24
    “「確かにちょっとそこまでできないよ」と言いたくもなる。が同時に、それはとりもなおさず、どこかで誰かが私たちの「できないよ」を変わって担っているから”
  • 『宗教国家アメリカのふしぎな論理』 矛盾だらけのアメリカを宗教から読み解く - HONZ

    その男は酒もタバコもしない。ギャンブルに手を出すこともない。刺激物はコーヒーすら飲まないのだ。キリスト教の教会に通い、積極的思考(ポジティブシンキング)を実践することで世界一の大国アメリカで人もうらやむ成功を手にした。この禁欲的に思える男の名前は、ドナルド・トランプ。そう、現アメリカ大統領のトランプには奇妙な信心深さがある。 テレビから伝わるトランプのイメージは、禁欲や信心深さという言葉からは対極にある。政敵を口汚く罵り、派手な女性遍歴を誇るトランプに、どのように禁欲的な性質が内在するのか。遠く日から眺めていると、その存在は矛盾だらけの奇妙なものに思えてくる。しかし、『反知性主義』でトランプ現象を予測したとも言われた著者の森あんりは以下のように、トランプの存在は特異なものではないと説く。 トランプの奇妙な信心深さは、アメリカ的なキリスト教の文脈ではけっして特殊な例ではないということです

    『宗教国家アメリカのふしぎな論理』 矛盾だらけのアメリカを宗教から読み解く - HONZ
  • 僧侶で歴史は動いた 『日本の奇僧・快僧』 - HONZ

    奇僧はまだしも、快僧……? 道鏡、西行、文覚、親鸞、日蓮、一遍、尊雲(護良親王)、一休、快川、天海……お坊さんの名前が10人ずらり。共通点は、歴史の教科書で名前を見たことがあること、それから人物がとんでもなくて、おもしろいこと。この10人について、それぞれコンパクトに評伝がまとめてある。醍醐味は、読み通すと日史が俯瞰できることだろう。 著者の今井雅晴さんは、1942年生まれ。日史学を学び、茨城大学や筑波大学大学院の教授として、日中世史や日仏教史を専門にしてきた。海外の大学で教える経験も多かったようだ。現在は筑波大学名誉教授。特に、時宗の一遍や、浄土真宗の親鸞についての著作が多い。親鸞は、思うように生きられなかった京都から42歳のときに新天地、関東へ入る。この東国での活動に重点をおいた親鸞伝が近著となるそうだ。 また、この『日の奇僧・快僧』自体は、1995年に講談社現代新書として同

    僧侶で歴史は動いた 『日本の奇僧・快僧』 - HONZ
  • 『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち - HONZ

    「ありそうもないこと、稀有なこと、不可思議なこと、奇跡的なこと」。生物地理学者のギャレス・ネルソンはかつてそんな言葉でそれを嘲笑したという。だが実際には、どうやらそれは生物の歴史において何度も生じていたようだ。それというのは、生物たちによる長距離に及ぶ「海越え」である。 書が挑んでいる問題は、世界における生物の不連続分布である。世界地図と各地に生息する生物を思い浮かべてほしい。大西洋を挟んで、サルはアフリカ大陸にも、南アメリカ大陸にも生息している。また、「走鳥類」と呼ばれる飛べない鳥たちは、南半球の4つの隔たった地域に分布している。さらに、ガータースネークはメキシコ土で見られるが、そこから海で隔てられたバハカリフォルニア半島の南部にも生息している。 そのように、系統的に近しい多くの生物が、海などの障壁で隔てられた、遠く離れた地域に生息している。しかしそうだとしたら、彼らはいったいどうや

    『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち - HONZ
  • 『幻の惑星ヴァルカン』 それはいかにして「発見」され、いかにして葬り去られたのか - HONZ

    水・金・地・火・木・土・天・海・冥。かつてそう教えられた太陽系惑星のなかから、2006年に冥王星が除外されたことは記憶に新しい。だがじつは、19世紀後半にはそれら惑星候補のなかにもうひとつ別の名前が挙げられていた。書の主役は、その幻の惑星たる「ヴァルカン」である。 ヴァルカンはその生い立ちからして冥王星とは異なっている。というのも、そもそもそんな星は存在すらしていなかったからだ。では、存在しないものがいかにして「発見」され、そして最終的に葬り去られることになったのか。書は、その誕生前夜から臨終までを、関係する天文学者や物理学者にスポットを当てながら、ドラマ仕立てに描いていく。 ストーリーは、17世紀後半、ニュートン力学の登場から始まる。周知のように、その偉大なる体系は、惑星の運動を含む広範な現象の統一的説明を可能にした。いや、説明だけではない。驚くべきことに、その体系は未知の現象に対す

    『幻の惑星ヴァルカン』 それはいかにして「発見」され、いかにして葬り去られたのか - HONZ
  • 『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』 - HONZ

    書は2016年9月に発表された、ジャーナリストのダン・アッカーマンによるノンフィクションThe Tetris Effect: The Game that Hypnotized the World(テトリス効果――世界を惑わせたゲーム)の邦訳である。「Hypnotize」は「魅了する」という意味もあるが、「催眠術をかける、洗脳する」という意味の言葉であり、世界的に大ヒットしたゲームを形容する表現としては、少々違和感を覚えるかもしれない。たとえばパックマンやドンキーコングを「世界を惑わせたゲーム」と表現したら、ファンからの納得は得られないだろう。これらのゲームが流行した当時、子供たちが勉強しなくて困った、という親世代の人々ならば話は別だが。 しかし書を読んだ後であれば、テトリスはまぎれもなく「世界を惑わせたゲーム」であると首肯してもらえるのではないだろうか。4つの正方形で構成されたピースが

    『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』 - HONZ
  • 『よしもと血風録 吉本興業社長・大﨑洋物語』 - HONZ

    2017年現在。僕はまだ吉興業の社長をやらせてもらっている。 「吉のやり方は読めない。いったいどうやって戦略を立てているんですか?」 最近は人からこんな風に聞かれることも増えた。 だが、このを読んでもらえば分かるように、僕自身には戦略のようなものがあったわけではない。目の前に出てきた〝やらなければならないこと〟や、半ば行き当たりばったりのように思いついたアイディアを、周りの助けを借りてなんとか形にしてきただけだ。人から教えてもらい、で読んだりしたことを自分なりに受け止め、できることを考え、やることがなければ自分で探してみる。そんなことの繰り返しだ。 それでも吉の在り方をほめていただけるのであれば、それは吉興業を助け、支え、応援してくれてきた人たちのおかげである。もちろん、すべての原動力となる芸人さんたちの努力と才能は欠かせない。 さすがに今は個別のプロジェクトで走り回る機会は減

    『よしもと血風録 吉本興業社長・大﨑洋物語』 - HONZ
  • 『月刊ムー』を読んでいるのは、どんな人たちなのか? - HONZ

    子どもの頃、両親の棚からこっそり取り出して読んだにはどうもいい思い出がありません。いい思い出どころかその後の悪夢に繋がったの代表格が『悪魔の飽』と『ノストラダムスの大予言』。 『ノストラダムスの大予言』については、200万部を突破する大ベストセラーであり、社会現象をも巻き起こし色々な方面に影響を及ぼしたと言われています。私の身の回りにも「どうせ1999年で世界は終わっちゃうから」って言って宿題やってこなかった人が何人も…みんな今どんな大人になっているんだろう。 これに限らずとも、小中学時代はオカルトが身近なところにありました。休み時間にコックリさんをやってみたり、テレビで見た川口浩探検隊の活躍にツッコミを入れたり、世界の七不思議について考えたり、ユリ・ゲラーの真似して曲げられた給のスプーンも数知れず…。 ここのところ、そんな苦いような酸っぱいような甘いような幼い頃の感動と興奮を思

    『月刊ムー』を読んでいるのは、どんな人たちなのか? - HONZ
  • 『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』日常風景に投影された、世界の分断 - HONZ

    先日、新潮ドキュメント賞が発表され、ブレイディみかこさんの『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)の受賞が決定した。この作品を高く評価するのが、文藝春秋で数々の名ノンフィクション作品を送りだしてきた下山 進さん。作の魅力がどういうところにあるのか、特別に寄稿いただいた。(HONZ編集部) 新潮ドキュメント賞を受賞したブレイディみかこ 『子どもたちの階級闘争』を読んだ。素晴らしかった。 300ページで定価2592円って、どれだけ部数を絞ってるんだ? と最初腹立たしく思ったが、読んでみて、このクオリティだったらまったく惜しくない。 1996年にクールな英国に憧れて渡英した筆者は保育士だ。 託児所の日常が描かれるのだが、ここで凄いのは、その日常を子どもたちやその母親、そして保育士たちの世界のドラマで読ませつつ、英国の政治そのもの、のみならず世界のあちこちで起

    『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』日常風景に投影された、世界の分断 - HONZ
  • 『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ

    『世界からバナナがなくなるまえに 糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 バナナがなくなってしまうだって!? 多くの人にとっては寝耳に水であろうが、しかしこの話、けっしてありえないことではないようである。 現在、人々が口にしているバナナは、その大半が単一の品種、すなわちキャベンディッシュバナナである。そしてそのバナナには、遺伝的な多様性がまったくない。というのも、キャベンディッシュは種子がなく、株分け(新芽を移植すること)をとおして栽培されるからである。それゆえ、「キャベンディッシュバナナはすべて遺伝的に同一であり、スーパーで買うバナナのどれもが、隣に並ぶバナナのクローンなのである」。 だがよく知られているように、そうした遺伝的多様性の低い生物は、天敵などの影響をもろに受けやすい。実際、かつて人々が口にしていたバナナ(グロスミッチェル種)は、「

    『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ