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ブックマーク / natrom.hatenablog.com (33)

  • イソジンうがいで新型コロナの重症化予防という話はどうなったか追いかけてみた - NATROMのブログ

    2020年8月の会見「うそみたいな当の話」 新型コロナウイルス感染症の第四波の真っ最中で、とくに大阪府は厳しい状況だ。大阪と言えば、昨年2020年8月に大阪府吉村洋文知事が会見で「うそみたいな当の話をさせていただきたい。ポビドンヨードを使ったうがい薬、目の前に複数種類ありますが、このうがい薬を使って、うがいをすることでコロナの陽性者が減っていく」と述べた。また、接待を伴う飲店の従業員や医療介護者・介護従事者などに「ポビドンヨードうがい薬によるうがいを励行」を勧めた*1。ポビドンヨードを使ったうがい薬の代表的な商品がイソジンうがい薬である。会見はテレビで放送され、うがい薬の売り切れが続出したという。 ポビドンヨードに新型コロナウイルスを不活化する作用があるのは事実だ。ただ、それは試験管内、実験室内の話で、実地臨床の場において感染予防効果や重症化予防効果があるかどうかは別問題である。

    イソジンうがいで新型コロナの重症化予防という話はどうなったか追いかけてみた - NATROMのブログ
    kaos2009
    kaos2009 2021/04/14
  • 何も悪いことをしていなくても人々は病気になる - NATROMのブログ

    がんを治すことが証明された事療法は、現時点では存在しない。がんになりにくい事ならある程度はわかっていて、がんの患者さんについても、基的にはそうした健康的な事が推奨されている。詳しくは ■がん体験者の栄養と運動のガイドライン:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] を参照して欲しい。なにも特別なことはない。「健康的な体重へ減量し、その体重を維持しましょう」「野菜、果物、全粒穀物を多く含む事パターンにしましょう」といったものだ。べてはいけないものはない。当たり前だが、健康的な事をしていてもがんになるときはなる。ましてや、がんを治す効果はない。 何度も書いてきたが、がんに対する厳格な事療法は、効果が不明確なわりに副作用が大きい。単純に栄養の偏り(野菜ジュースを大量に飲むためほかの事が摂取できない、など)が体力を落とす以外にも、自分の好きなものをべられない、とい

    何も悪いことをしていなくても人々は病気になる - NATROMのブログ
  • HPVワクチンをめぐる「ファクトロンダリング」 - NATROMのブログ

    つくば市議会議員小森谷さやか氏による、ヒトパピローマウイルス(HPV)および子宮頸がんに関する誤った情報が訂正されないままでいる。 HPVワクチンによって恩恵を受ける人の推計は10万人あたり数百人というのがコンセンサス まずはコンセンサスの得られている情報から紹介しよう。HPVの慢性感染は子宮頸がんの原因だ。HPVに感染しても多くは自然治癒するが、一部は前がん病変や子宮頸がんを引き起こす。HPVワクチンは高リスク型のHPVの感染や前がん病変を予防することが確認され、子宮頸がんも予防することが期待されている*1。 もしかしたら「感染しても多くは自然治癒するならワクチン等の対策は不要だ」と考える方もいらっしゃるかもしれない。そのような方は、喫煙者の多くは肺がんにならないし、高血圧患者の多くは心筋梗塞にならないので、喫煙や高血圧に対する対策も不要だとお考えであろう。一定水準以上の医学的知識があれ

    HPVワクチンをめぐる「ファクトロンダリング」 - NATROMのブログ
  • 「花粉を水に変えるマスク」の臨床試験の結果は早く公表されるべき - NATROMのブログ

    一年前に話題になった「花粉を水に変えるマスク」 「花粉を水に変えるマスク」ってありますよね。1年前(2018年春)に活発な議論がなされました。インターネット上では山形大学理学部物質生命化学科天羽研究室の以下のページがまとまっています。 ■花粉を水に変えるマスクに飛びついてはいけない【追記変更あり】 — Y.Amo(apj) Lab ■「花粉を水に変えるマスク」をめぐる追加の議論 — Y.Amo(apj) Lab また、RikaTan (理科の探検) 2019年4月号において左巻健男さんが『「花粉が水に変わるマスク」騒動』を寄稿しています。 メーカーは、「ハイドロ銀チタン」という素材を触媒として、花粉内のたんぱく質を水などに変えると主張しています。もちろん、たんぱく質は水素以外にも炭素や窒素や硫黄を含んでいますので、水だけに変えるわけではありません。 謎の「化学式」 これまで私はほとんど「花

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  • 「生存率の上昇」と「死亡率の低下」は違います - NATROMの日記

    ■医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ?にて、『Wikipediaの「がん検診」にはbが正解であると書いてあるが…』とのブックマークコメントをenvsさんからいただきました。こうして疑問点について教えていただけることをたいへんにありがたく思います。 がん検診の有効性を示す根拠は、「b.検診で発見されたそのがんの患者の生存率の上昇」ではなく、「c.集団全体におけるそのがんの死亡率の低下」です。■がん検診 - Wikipediaには、 がん検診の有効性は、そのがん検診受診者の当該がんによる死亡率が、非受診者のそれよりも低下するかどうかで評価される。 とあります。当該がんによる死亡率の低下という部分がキモです。「死亡率が低下するってことはすなわち、生存率の上昇だ」とお考えの方もいるかもしれません。この辺りは初見殺しでして、「医師でもけっこう間違えている」理由として、"死

    「生存率の上昇」と「死亡率の低下」は違います - NATROMの日記
  • 医師国家試験を解いてみよう。「がん検診の有効性を示す根拠はどれ? - NATROMの日記

    がん検診にまつわる誤解は根深く、医師でもけっこう間違えている人がいます。ただ、医師国家試験にがん検診が有効である根拠を問う問題が出題され、若い世代の医師はがん検診の疫学をより正確に理解しているものと思われます。 厚生労働省のサイトに過去問がありましたので、ここで引用・紹介します。さて解けますか?このブログの読者は、その辺の平均的な医師と比べると、ずっと正答割合が高いのではないかと思います。 第106回医師国家試験問題より。 集団に対してある癌の検診を行った。 検診後に観察された変化の中で、検診が有効であったことを示す根拠はどれか。 a 検診で発見されたその癌の患者数の増加 b 検診で発見されたその癌の患者の生存率の上昇 c 集団全体におけるその癌の死亡率の低下 d 集団全体におけるその癌の罹患率の低下 e 検診に用いられた検査の陽性反応適中率の上昇 答えは下のほうに。 正解c. 検診後に集

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  • インフルエンザ蔓延予防のための受診は必要か? - NATROMのブログ

    「高リスクグループや重症者でなければ受診は必要ないというけれども、インフルエンザだったら他人に感染させないために解熱してから2日間は自宅での安静が必要であるのだから、きちんと受診して診断してもらう必要があるのではないか」という意見を聞く。 結論を言えば、インフルエンザの蔓延防止が目的であっても診断や検査目的の受診の必要性は乏しい*1。とくに流行期においてはそうだ。なぜなら診察や検査でインフルエンザを否定するのは困難だからである。 インフルエンザ迅速検査はご存知の方も多いだろう。「スワブ」という綿棒を細長くしたようなものを鼻の奥に入れて検体を採取するあれだ。鼻汁や鼻腔ぬぐい液中のインフルエンザウイルス抗原を検出することで、15分以内に検査結果が出る。インフルエンザ迅速検査で陽性であった場合は、ほぼインフルエンザだと確定する。しかし、インフルエンザ迅速検査で陰性であってもインフルエンザではない

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    kaos2009
    kaos2009 2018/02/16
  • インフルエンザで「早めの受診」が必要なのはどんな人? - NATROMのブログ

    インフルエンザが大流行である。Yahoo!ニュースに■インフルエンザで「早めの受診」は間違いです! (新潮社 フォーサイト)という記事が載った。コメント欄やブックマークは賛否両論だ。 読んでみたところ、いいことも書いてあれば、首肯できないことも書いてある。持病などがない健康な成人がインフルエンザに罹っても軽症なら「早めの受診」が不要であるのは(医学的には)事実である。リンク先の記事では、あたかも「軽症患者が集中したら医療機関がパンクするから我慢しろ」と言っているかのように読めるが、医療機関の都合とは無関係に、個人レベルの利得のみを考えてもインフルエンザ流行期における軽症患者の受診はお勧めできない。 ほとんどの場合、インフルエンザは薬を使わなくても自然に治る。抗インフルエンザ薬は症状緩和までの時間を約1日間早める効果があるので、症状がとてもつらい人は薬から得られる利益もあるが、それほどでもな

    インフルエンザで「早めの受診」が必要なのはどんな人? - NATROMのブログ
    kaos2009
    kaos2009 2018/02/03
    “。医学的には受診が不要であるが社会的には必要である場合”
  • イングランドにおいてHPVワクチン接種世代の子宮頸がんは増加していない - NATROMのブログ

    全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会事務局長・日野市議会議員の池田としえ氏が、英国においてHPVワクチン接種世代の子宮頸がんが確実に増加しているとツイートした。 【拡散希望・ワクチン接種後癌の増加か?大問題!ワクチン接種したからこそ、検診をこまめにか?】子宮頸がんワクチン接種率が85%前後の英国で、接種世代の子宮頸がんが確実に増加していることを反映しています→英国で子宮頸がん検診開始年齢を下げなくてはならない現実 https://t.co/Y5xobwyICX— 池田としえ(利恵) (@toshi2133) 2018年1月25日 池田としえ氏のツイートのリンク先は■英国で子宮頸がん検診開始年齢を下げなくてはならない現実 - 葉月のブログである。『葉月のブログ』では、イギリスのメイ首相がスメアテスト(子宮頸がん検診)の対象年齢を25歳未満に引き下げるよう訴えたとするBBCニュースをリンクしてい

    イングランドにおいてHPVワクチン接種世代の子宮頸がんは増加していない - NATROMのブログ
  • 甲状腺がん検診は医療過誤なのか? - NATROMのブログ

    「容疑者@白石隆浩 ♀は俺 ♂の嫁♪」さん( https://twitter.com/SOSFukushima/status/943969668510781440 )からのご質問にお答えします。 甲状腺の検査は医療行為である。(YES/NO) Yes。医療行為です。 ある医療行為には「大きなデメリットがあり、かつ、メリットはほとんどない」ということが標準的知見として得られている状態において、当該の医療行為を行ったならば、その行為は医療過誤である。(YES/NO) ほぼYes。医療過誤です。例外については後述。 (無症状者に対する)甲状腺検査は「大きなデメリットがあり、かつ、メリットはほとんどない」ということは、標準的知見として得られている。(YES/NO) ほぼYes。より適切に言えば、標準的知見となりつつある、です。専門家と一般の臨床医の間でギャップが生じることはしばしばあります。詳しく

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    kaos2009 2017/12/22
  • 加熱式たばこ可は完全禁煙ではない - NATROMのブログ

    以前、■べログで完全禁煙の店を検索する方法を紹介したが、今後はこの方法は実用的でなくなるかもしれない。 べログが『「プルーム・テック」を楽しめるお店特集』を行っている*1。「プルーム・テック」とは加熱式のたばこ用デバイスである。現状の法律下では個々の飲店が加熱式タバコを許可するのはかまわないし、べログがそういう店をリスト化して紹介するのも良いだろう。 問題は加熱式たばこ可の飲店も完全禁煙の条件下で検索結果に含まれてしまいうることである。以下は2017年12月10日現在、禁煙(分煙を含まず)の条件下で検索できた店の一例*2。 だいたい「メインフロア完全禁煙 個室喫煙可」ってなんだよ。それは完全禁煙ではなく分煙だよ。 加熱式たばこ可は完全禁煙ではない。そんなこともべログはわからないのか。加熱式タバコ可の店は完全禁煙の検索結果から外せ。 もともとべログの点数はあまり当てにしていなか

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    kaos2009 2017/12/11
  • 乳がん術後の「抗がん剤ストップ」のリスクはどれぐらい? - NATROMのブログ

    女優の南果歩さんが、ステージIの乳がんの手術および放射線治療後の抗がん剤をストップしていることを明かしたという報道があった。 ■南果歩「見にして」抗がん剤ストップ中と明かす (日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース 南はステージ1の乳がんと診断され、昨年の3月11日に手術を受けた。転移はなく、現在までに再発の兆候もないという。 現状について聞かれると「今、ハーセプチンという抗がん治療をストップしています。抗女性ホルモン剤の投薬もストップしています。これは俗に言う、代替治療に切り替えたということです」と打ち明けた。続けて「私のやり方はひとつの症例であって、皆様に当てはまるものではないかもしれません。こういう考え、治療法があるんだと、表に出る仕事をしているので、分かりやすい見になると思うんです」と、現状を明かした理由について語った。 ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)は、HER2と呼

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    kaos2009 2017/10/03
  • クリニックで行われた臍帯血投与に意味がない理由 - NATROMのブログ

    無届けで臍帯血(さいたいけつ)の投与を行ったとして、医師を含む6人が逮捕されるというニュースがあった。 ■さい帯血無届け投与、販売業者や医師ら6人逮捕 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) がんの治療や美容目的で臍帯血の投与が行われていたという。該当するクリニックで行われていた臍帯血の投与は、医学的には意味がない。意味がないというか、意味がわからない。よくある細胞免疫療法は、少なくとも理論上は効くかもしれないと思えるようなものであるが、臍帯血については逮捕された医師がいったい何を期待していたのか見当がつかない。ぜんぜんわからずに雰囲気で臍帯血投与をやっていたとしか思えない。 臍帯血移植は標準医療である。大きなくくりでは、骨髄移植や末梢血幹細胞移植と同じく、造血幹細胞移植の一種である。たとえば、血液系の悪性腫瘍(がん)に対して臍帯血移植が行われている。しかし、そのメカニズム

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  • 受動喫煙による死亡者数はどうやって計算しているのか - NATROMのブログ

    において受動喫煙が原因で一年間に1万5000人が死亡しているとされている*1。もちろんこれは推定なので誤差を含む。しかし、おおよその数字としては正しい。こうした数字が話題になるたびに「どうやって計算したかわからない」という意見が出る。極端な場合には「1万5000人も受動喫煙が原因で死んでいるなんて嘘だ。統計の数字を操作したのだろう」という反応すらある。 1万5000人の根拠については厚生労働省のサイトにある(■全て表示|厚生労働科学研究成果データベース MHLW GRANTS SYSTEMの「受動喫煙と肺がんについての包括的評価および受動喫煙起因死亡数の推計」)。受動喫煙によるリスク増加が明らかな肺がん、虚血性心疾患、脳血管障害(脳卒中)、乳幼児突然死症候群(SIDS)の4疾患について受動喫煙による死亡を計算し合算したものである。 具体的な数字で説明したほうがわかりやすいだろう。例とし

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  • 「子宮頸がん予防ワクチン?おやめになったほうがいい」のファクトチェック - NATROMのブログ

    もしあなたががんにかかり、手術を受けることになったとしましょう。現在の日では、ほとんどの場合、手術のメリットとデメリットは何か、あるいは手術を受けなかったらどうなるのか、医師から説明があります*1。これから受ける医療についての情報を提供されて(インフォーム)、その医療を受けることに同意(コンセント)するか、あるいは受けないかは、患者さんが決めます。医師が決めるのではありません。「インフォームド・コンセント」という言葉はすでに広く知られています。 手術に限らずあらゆる医療について、正確な情報が提供された上で、患者さんが医療を受けるかどうかを決めるのが理想です。ワクチン接種についてもです。もし提供された情報が不正確であれば、たとえ患者さんが同意し、書類にサインしていたとしても、その同意は無効です。患者さんの意思決定の助けになるよう、医療者はできるだけ正確な情報を提供するように努力しなければな

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    kaos2009
    kaos2009 2017/04/21
    “YAHOO!ニュースに■子宮頸がん予防ワクチン?おやめになったほうがいい (デイリースポーツ) - Yahoo!ニュースという記事が掲載されました。子宮頸がん予防ワクチンについての質問に対し、芦屋市・松本クリニック院長
  • 内閣府チームによる研究開発プログラムの一つがニセ科学だった - NATROMのブログ

    内閣府チームによる研究開発プログラムにおいて科学的手法に問題があったことが日経済新聞のサイトに掲載された(日経産業新聞4月12日付)。 ■内閣府チーム、仮説段階の研究を表彰  :日経済新聞 「このコンテストから新しい企業の研究の種を育てたい」。ImPACTの山川義徳プログラムマネージャー(PM)は2月、都内のシンポジウムで力を込めた。壇上に上がった新田ゼラチンや日アロマ環境協会などの代表者に賞状を送り成果をたたえた。 コンテストの狙いは脳の健康に効果のありそうなべ物や生活習慣などを見つけることだ。企業などからアイデアを募り、山川PMらが開発した脳活動の指標をもとに、アイデアを試した時の脳の変化を測る。脳の健康に効果のありそうなものを表彰するという内容だ。今回が2回目でコラーゲンペプチドの摂取、ラベンダーのアロマハンドマッサージが表彰された。 山川PMらは1月には、製菓大手の明治と高

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  • 福島県の甲状腺がん検診の2巡目の数字から言えることと言えないこと - NATROMの日記

    福島県の甲状腺がん検診において、2巡目で50人を超えるがんあるいは疑い例が見つかった。これらの例は1巡目(先行調査)ではがんは指摘されていない。「たったの2年間で50人以上もの新たながんが発症しているのであるから明らかに被曝による多発である」という主張がなされているが、そうは言えない。 たとえば、津田敏秀氏は、2巡目のがん検診を受けた236595人中がんの発症が51人(216人/100万人)を、全国平均発症率から推定した有病割合5人/100万人×2年=10人/100万人と比較して、22倍の多発だと主張している*1。過剰診断がゼロであるならば、この計算は正しい。津田氏の主張をまとめると「過剰診断がゼロだと仮定すると甲状腺がんは多発している」になるが、そんなことは計算なんてしなくても自明である。過剰診断がどれぐらいの割合なのか不明なので苦労しているのだ。 仮に、検診で発見可能な甲状腺がんのうち

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  • 検診で発見されたがんの予後が良くても、がん検診が有効だとは言えないのはなぜか? - NATROMのブログ

    「わかる」って、たーのしー!よね 私たちは、地球が球形をしていて太陽の周りを回っていることを幼いうちから教えられている。けれども、地球が丸くて動いているなんて、よくよく考えると直観に反している仮説である。普通に考えれば地面は平らで動いていない。動いているのは太陽のほうだろう。人類で最初に地球が丸いと理解することは、さぞエキサイティングであっただろう。 別に人類で最初でなくったって、直観に反することが事実だわかる過程は素晴らしい体験である。私は大学生のころ、イギリスの進化生物学者であるドーキンスが書いた『利己的な遺伝子』(当時は『生物=生存機械論』)というを読んで、動物の行動は「種の保存」のためのものであるという「常識」が間違っていることを思い知らされた*1。貴重な体験であるが、どういう感情なのか説明するのが難しい。ゲームをプレイしたことのない方にはまったく伝わらないたとえで申し訳ないが、

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    kaos2009
    kaos2009 2017/03/07
  • 2017-02-07

    私の外来に糖尿病コントロールのあまりよくないおっちゃんがいる。しばしば入院を勧めるのだが、多忙を理由にいつも拒否される。病気に理解がない上司でもいるのか、職場を長期間休めないそうなのだ。従業員に急病で突然休まれるよりは予定入院で健康を保ってもらったほうが職場にとってもよいように思うのだが、仕事を休めず無理をする患者さんはけっこういらっしゃる。 おっちゃんは外来でも、診療時間ぎりぎりか、ときには診療時間が終了してから受診したりする。私だけでなく、看護師や検査技師や事務員の方々が残業することになりぶっちゃけたいへん迷惑である。建前では、急病ではない限り時間外受診はお断り、もしくは、次の診療日までの数日分の処方のみということになっている。しかし、おっちゃんにそんな対応をしても、次にいつ来院できるのがわからない。受診のために仕事を早退するのも一苦労なのだ。仕方ないねえ、とか言いながら、通常日数分の

    2017-02-07
  • ピロリ菌は胃がんの原因の何%か? - NATROMのブログ

    ピロリ菌感染は胃がんの原因の一つである。主な原因であると言っていい。ピロリ菌が胃がんを引き起こすメカニズムもだいぶ明らかになっているが、よしんばメカニズムが不明であっても、疫学研究からピロリ菌と胃がんの因果関係は証明されている。 ただ、ピロリ菌感染が胃がんの原因だと言っても、ピロリ菌に感染していなくても胃がんになる人もいれば、ピロリ菌に感染していても胃がんにならない人もいる。報告によっても差があるが、ピロリ菌に感染していると、感染していない場合と比較してだいたい5〜10倍ぐらい胃がんになりやすい*1。ピロリ菌感染と胃がんの関係は、喫煙と肺がんの関係と同じぐらいの強さで、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんの関係よりは弱い。 「胃がんの99%はピロリ菌が原因」という主張があるが、さすがに99%というのは過大評価である。仮に胃がん患者の99%がピロリ菌陽性であったとしても、その中にはピ

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