○現代思想2008年9月号「特集・大学の困難」 青土社 2008.9 主として国立大学、特に人文系大学と人文学をめぐる「困難」を論じたもの。平成16年(2004)に国立大学の法人化がスタートして、今年は4年目になる。当初こそ、設置者(大学)の自立性を高めることによって、競争的環境のもと、個性ある取り組みが評価される、などというバラ色の未来予想図が飛び交ったものだ。私自身、それに期待を抱いた面もある。しかし、良心的な研究者(と私が思う人々)から聴こえてくる、その後の国立大学の惨状はひどいものだ(→小森陽一氏と西谷修氏の対談)。そして現在、特に人文学分野をめぐる困難はここに窮まれり、という状況である。 不公平で無駄の多いCOE制度の欠陥については、複数の論者が批判的に触れている。Excellence(卓越性)という空疎な尺度を導入することで、比較不能なものを序列化し、勝ち組と負け組の二極化を加