全国169カ所のダム管理事務所はいつもと異なる賑わいを見せていた。2―5月のことだ。来訪者の目当ては「天皇陛下御在位30年記念事業」の一環として期間限定で無料配布した「ダムカード」。ダムの愛好家だけでなく一般の認知度も高いアイテムの期間限定品とあって求める人であふれた。各地のダム管理事務所からは「いつもの2―3倍の人が連日来訪した」や「想定以上の早さで配布が終了してしまった」という声が聞かれ、配布枚数は3ヶ月で約67万枚に上った。 この反響に特別な感慨を抱く人たちがいた。ダムカードの生みの親たちだ。ダムを愛するライターのふとした一言がダム行政を司る国土交通省の職員の耳に入り、ダムカードは半年足らずの製作期間を経て2007年7月に誕生した。ダムが税金の無駄使いの象徴のように扱われていた当時、急ピッチで作業した当事者たちはその後の12年間で680種類以上生まれ、ダムに好意的な関心を持つ人を増や