2023.12.19書評 「世界的規模の陰謀」を背景に日米の疑獄に新たな仮説 文:奥山 俊宏 (上智大学教授・元朝日新聞記者) 『ロッキード』(真山 仁) 出典 : #文春文庫 ジャンル : #ノンフィクション 『ロッキード』(真山 仁) バブル崩壊以降の「失われた三〇年」を経済社会の深層からえぐって浮かび上がらせるストーリーの第一級の語り手であり、当代きっての小説家である真山仁が、初めて長編ノンフィクションに取り組んだ、その第一作がこの『ロッキード』だ。 どの新聞記者よりも新聞記者らしく、どのジャーナリストよりもジャーナリストらしく、もつれて曲がりくねる細い糸をたぐり、関係する人を探しあて、愚直に話を聴き、そのようにして培った堅い地盤の上に、しかし、この事件について文字をつづったことのある数多(あまた)の記者、作家、官僚、法律家、政治家の、おそらく誰よりも高く雄大に想像の翼を羽ばたかせ、