本稿の要旨 「これからの世界は誰も経験したことのない新しい世界へと変わっていきそうだ、その中で日本の未来が暗いものになるのではないか」と、漠然とではあれ多くの人が感じている。そうしたときには国民全体を束ね、一体化し、ある方向へ向かわせようとする動きが現れる。それを目指す時、一番重要なのは、人々が主体的・能動的・積極的に自ら進んでその動きに参加してくるように仕向けることである。安倍元首相に代表される人々は「國体の本義」がその目的にまた使えるのではないかと考えている。 「國体の本義」は今から80年以上前、このままでは日本はダメになってしまうのではないかという強い切迫感を持っていた当時の人々に、この世界を理解し、それに立ち向かう「正しい」ものの見方・考え方を与え、戦争準備のための総動員体制に自ら進んで参加してくるようにする上で大きな力を発揮した。 この本がそれほど大きな力を持っていたのはなぜか。