1569年、京都、二条城にて 足利義昭が引っ越したばかりの二条城。 足をとめた下男が同郷の男をチッと舌打ちしながら呼び止めた。 「おいおい、ここだけの話だけどよ、足利義昭、信長を首にするってさ」 「殿を呼び捨てかよ」 「そんでええわ」 「どういうことだよ」 「ええか、ここだけの話だぞ・・・、信長のやつ、むちゃくちゃ小うるさいって話でな。義昭がよぉ、そうとう苛立ってる。あの坊ちゃん殿さまに、当たり散らされるこっちはいい迷惑よ」 「そうか、うるさいか?」 「うるさい」 「信長のやつ。小さなことにいちいち文句つけてくるんだぜ。小姑かって話よ」 「ほう」 「例えばな、勝手に大名どもに手紙を出すな、出すなら信長を通せとか、殿中で使う金が多すぎるとか、なんとか、そんな掟を16個も言ってきたんだってよ。おかげで、義昭がブチギレて、えらい迷惑だよ。その辺のモノなげまくって、障子やぶって、いったい誰が片付け