彼は早めに結婚し、二十代のうちに離婚して、それからというもの彼女をとっかえひっかえするようになったのだそうだ。離婚から数年たって現在に至るまで、私は何人かの共通の知人から、彼に関する派手な、あるいは醜い噂を聞いていた。誰かがその話をするたびに、そうかい、と私はこたえた。たいして仲良くもない知人が他人の彼女を横からかっさらおうが、その彼女を三ヶ月で捨てようが、「基本的には二十代前半がいいけど尽くしてくれるなら三十までOK」だろうが、どうでもいいことだ。だって彼は私の友だちではなかったし、彼にまつわる噂に登場する人物も誰ひとり、私のだいじな人じゃなかった。彼はもともとそんな人間ではなかったと評する人もあったけれども、彼がどんな人間かを私はそもそも知らなかった。学生時代のあいまいな人間関係の端のほうにいたようないないような、その程度の間柄なのだった。 彼をふくめた集団で久しぶりに顔を合わせる機会