法制化を前提に事を急ぐ政府の姿勢にもともと無理があった。海賊版サイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」である。 政府が設けた有識者会議が、報告書のとりまとめを断念した。会議自体を無期限で延期している。意見の対立は埋まらず、話し合いは最後まで紛糾した。 来年の国会への法案提出を目指す政府のもくろみはつまずいた。議論を尽くさないまま方向づけはできない。遮断の法制化はいったん棚上げすべきだ。 漫画や雑誌を無料で読める海賊版サイトは、著作権を侵害し、出版社にも大きな損害を与えている。対策は急務である。 ただ、ブロッキングは、誰がどのサイトを見るかを漏らさず把握することが前提になる。憲法が定める「通信の秘密」を侵害し、プライバシーや内心の自由を脅かす恐れが大きい。 特定のサイトへの接続を遮ることは、検閲にもつながりかねない。表現の自由を保障する憲法は検閲を厳しく禁じている。 有識者会議では、