表紙はピカソ、「ピロメラを犯すテレウス」だ。テレウスは、義理の妹のピロメラを人気のない場所へ連れ込み、レイプする。終わった後、ピロメラは、テレウスに告げる。 「もう恥じてなどいない、私はこのことを広言する。機会があれば、人前で誰にでも言うつもりです。天もそれを聞くでしょう、もし天に神がおいでなら神も私の言うことを聞かれるでしょう」 告発を恐れたテレウスは、ピロメラの舌を切り、置き去りにする。オウィディウスの『変身物語』の一幕だ[wikipedia:ピロメーラー]。このように、女を黙らせ、女の言葉を軽んじ、権力から遠ざけようとする動きは、古来からあったという。そのメカニズムを告発したのが、『舌を抜かれる女たち』になる。 著者はケンブリッジ大教授のメアリー・ビアード、元は講演録で、昨今の MeToo 運動を受けて大幅に加筆したもの。古代ギリシャ・ローマからの文芸や美術をひも解きながら、女性の声
![女性の声を奪う力と、それに抗う力『舌を抜かれる女たち』](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/15a0200e4e07fe1cc7d1d823a40a067a2f708e51/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fdain.cocolog-nifty.com%2Fmyblog%2Fimages%2Fsugohon.jpg)